コストを削減できない可能性も
「脱クラウド」でオンプレミス回帰 選ぶべき戻り方は?
クラウドに移行させたシステムをオンプレミスに戻す際、どのような点に注意する必要があるのだろうか。例えばハードウェアの保守期間が過ぎているために、新しいハードウェアの調達が必要になる可能性がある。
オンプレミスのシステムをパブリッククラウドに移行した企業の中には、パブリッククラウドのコストが高過ぎるために、オンプレミスにシステムを戻す「脱クラウド」を検討しているところもあるだろう。その際に注意すべきことは、オンプレミスに戻ったとしても運用コストがゼロになるわけではなく、クラウドと比べてコストを全く削減できない場合もあるということだ。
クラウドベースのアプリケーションをオンプレミス向けにカスタマイズしようとすれば、オンプレミス特有の制約事項に阻まれ、作業が頓挫することも考えられる。脱クラウドは大仕事になるということだ。
オンプレミスの仮想化基盤へ戻るメリットは少なくないが、向き合う必要のある難題もある。例えば、老朽化したインフラをモダナイゼーション(最新化)することだ。ベンダーが保証している保守期限を過ぎれば、保守費用は高額になる。オンプレミスのインフラを構築してから長い期間が経過していれば、ハードウェアは廃棄せざるを得ないこともある。そうなればインフラの調達を最初からやり直さなければならない。
クラウドからオンプレミスにアプリケーションを戻す際には、インフラの選定だけでなく、さまざまな作業が発生する。クラウドの既存環境を維持しつつ、新しいデータセンターを立ち上げるという個々の作業を同時並行で進めなければならない。それらのバランスを取るのは簡単ではない。オンプレミスへの移行作業が、コストやベンダーサポート、システムのパフォーマンスに与える影響についても正しく見積もる必要がある。
以下では、脱クラウドを進める際、ハードウェアの選定において考慮すべき事項を説明する。
脱クラウドのインフラ選定
オンプレミスへの移行で候補になるインフラは従来の3層型インフラ、つまりラックマウント型サーバやブレード型サーバ、共有ストレージの組合せだ。これ以外で検討する場合、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)が有力候補になる。HCIのソフトウェアをあらかじめ組み込んだHCIアプライアンスであれば、コンピューティングリソースとストレージが一体になっているため、短期間で構築可能だ。
HCIアプライアンスでは電力供給に関して注意が必要だ。1つの筐体の中でインフラのさまざまな処理を実行する必要があるため、HCIアプライアンスは高密度の電力供給を必要とする。データセンターが3層型インフラの電力供給の仕組みを採用している場合、HCIアプライアンスでは不足する場合がある。
電力供給の仕方は、HCIアプライアンスの導入可否を分けるほどの要素にはならない。ただしデータセンターにHCIアプライアンスを導入する際は、電力供給の仕方に配慮する必要がある。例えばラック構成を検討する際、HCIアプライアンスは1ラック当たり1、2ユニットに制限するのが理想的だ。
HCIアプライアンスの電力供給に関するもう一つの重要な点は、無停電電源装置(UPS)だ。3層型のアーキテクチャを考えた場合、大規模なストレージシステムであれば、補助電源としてUPSシステムを内蔵している。そのためUPSを外付けで検討する必要があるのは、サーバのみだ。HCIアプライアンスの場合、コンピューティングとストレージの両方のリソースが外付けのUPSシステムを必要とする。UPSの容量が適切でないと、停電時に必要な電力供給が不足したり、システムを保護する性能が低下したりする可能性がある。
ストレージ仮想化とNVMe
HCIアプライアンス以外には、SSD(スリッドステートドライブ)とストレージインタフェース規格「NVMe」(Non-Volatile Memory Express)、VMwareの「vSAN」などのストレージ仮想化ソフトウェアを組み合わせて導入する選択肢もある。これらは、共有ストレージシステムの容量を低コストで節約できる手段として役立つ。ただし問題もある。
共有ストレージシステムの欠点の一つは、ネットワーク速度が低下することだ。ストレージ仮想化製品とNVMeのネットワークのデータ転送速度を1Gbpsにした場合、速度が足りない可能性がある。ストレージ容量の増加に対処するためには、少なくとも10Gbpsのネットワークを用意する必要がある。ラックのネットワークスイッチが拡張できない場合は、ネットワークスイッチのアップグレードが必要だ。
コンピューティングリソース
脱クラウドの際、コンピューティングの処理能力についても考慮する必要がある。CPUのコア数とクロック周波数の両方が増加すると、負荷が増加し、消費電力も増加する。サーバOS「Windows Server 2016」のライセンスは物理コア数に応じた新しい体系になっているため、その点にも注意が必要だ。
既存のハードウェアの寿命がどの程度残っているのかも考慮する必要がある。老朽化したハードウェアを継続利用するために追加的に投資を繰り返すのは、時間とリソースの無駄遣いになる可能性があるからだ。
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