「MaaS」(Market as a Service)がSaaS開発者を楽にする理由と、2つの課題:「MaaS」で広がる可能性【後編】
アプリケーションをSaaS(Software as a Service)として開発、提供しやすくする「MaaS」(Market as a Service)の商用サービスが登場した。何を可能にし、どのような課題があるのか。
ベンダーの間では、開発したアプリケーションをSaaS(Software as a Service)として提供する動きが加速している。顧客接点となるアプリケーション(SoE:Systems of Engagement)をSaaSとして開発、提供することで、顧客サービス向上を図ろうとしているユーザー企業もある。SaaSの開発や提供を手掛けるこうした企業(以下、SaaS事業者)を支援するサービスが「Marketplace as a Service」(MaaS)だ。MaaSはログ記録やパフォーマンスモニタリング、料金管理、データベースなど、SaaSの構成要素として使えるさまざまなサービス(以下、SaaS用サービス)をSaaS事業者に提供する(参考:前編「『MaaS』とは? SaaSを手軽に開発するための新たな選択肢」)。SaaS用サービスベンダーと、SaaS事業者を結び付ける場として機能する。
MaaSベンダーの代表例がManifoldだ。同社のMaaSはカタログ、プロビジョニング(コンピュータやネットワークなどのリソースの準備)、請求処理といった標準的なMaaSの機能を備える。
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SaaS事業者はMaaSにあるさまざまなSaaS用サービスを活用すれば、独自のSaaSを開発、提供しやすくなる。例えばSaaS事業者が開発したSaaSが、SaaS用サービスにアクセスするための認証処理に必要な作業は、MaaSが提供するクレデンシャル(IDやパスワードといった資格情報)を備えたランタイム(プログラムの実行に必要なソフトウェア)を使うことで省略できる。
クラウドベースのメッセージキュー(サービス間でデータを送受信するための機能)を提供するIron.ioは、ManifoldのMaaSを使うことで、個々のSaaS用サービスベンダーが構えるマーケットプレースを使うよりも簡単に、複数のクラウドサービスを管理できるSaaS群を構築した。「MaaSを導入するまでは、メッセージの単純なリスト作成に必要な処理ですら複雑で厄介だった」と、Iron.ioのCEOであるディラン・スタマット氏は語る。
複数ベンダーのSaaS用サービスを利用するために重要なことについて、調査会社Wikibonのアプリケーション開発担当リードアナリストを務めるジム・コビエルス氏はこう語る。「異なるベンダー間のSaaS用サービスを横断する次世代アプリケーションの構築、開発、管理には、Manifoldが提供するようなMaaSが不可欠だ」
コビエルス氏はManifoldのMaaSについて、さまざまなSaaS用サービスを組み合わせられるサービスだと評価する。Manifoldは、多様なベンダーが提供するSaaS用サービスに関する調査や利用契約、開発、SaaS事業者に対する利用料の請求を一元的に実施する。SaaS事業者は、こうした一連の作業を既存のDevOps(開発と運用の融合)ワークフローに組み込むことが容易になる。
こうしたMaaSの主なライバルは「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform」といった大手クラウドサービスになるというのが、コビエルス氏の意見だ。これらのサービスは、それぞれが豊富なSaaS用サービスを取りそろえており、独自のマーケットプレースを構築してSaaS事業者が自身でSaaS用サービスを調査、利用契約、開発、管理できる環境を提供している。
MaaSが解決すべき課題は
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