AIの企業導入の実際【後編】
AI製品「Salesforce Einstein」&「SAP Leonardo」導入事例
AIの導入事例は珍しくなくなったが、特定製品の実際についての情報はまだ少ない。ここでは「Salesforce Einstein」と「SAP Leonardo」の事例を紹介する。
前編( Computer Weekly日本語版 2月5日号 掲載)では、機械学習の導入の実態を解説するとともに、1つの事例を紹介した。後編では、機械学習の残り2つの事例を紹介する。
Standard Life Aberdeenでの販売コンバージョン率の向上
Standard Life AberdeenがSalesforce.comのAIプラットフォーム「Salesforce Einstein」を導入したのは、販売データとマーケティングデータをもっと効率的に活用して、同社の金融アドバイザー(1万8000人)の顧客コンバージョン率アップをサポートすることが目的だ。
英国を拠点とする同社は、Standard LifeとAberdeen Asset Managementの合併(2017年)によって誕生した。同社がこの戦略において掲げる1つ目の目標は、的外れなメッセージで金融アドバイザーを苦しませることなく、販売とマーケティング情報の利用方法を最適化して金融アドバイザーの効率を上げることだ。
2つ目の目標は、金融アドバイザーが顧客と関わるチャンスを見定め、適切な刺激を提供して販売を向上させること。3つ目の目標は、ダッシュボードで金融アドバイザーの総合的な販売実績を把握し、必要に応じて同社の戦略に金融アドバイザーが適応しやすくすることにある。
同社で企業間CRMの責任者を務めるダンカン・ミューア氏は次のように述べる。「当社が注力しているのは、Salesforce Einsteinを中核とするデータ駆動型の事業を構築することだ」
過去6カ月間、Standard Life Aberdeenは同社の核となるデータが、堅牢(けんろう)かつ適切な場所に存在するよう努めてきた。同社はまた、販売とマーケティングのチームが新しい働き方に満足し、慣れていけるように適切な体制とプロセスを導入するのに忙しい。
「当社は既に販売コンバージョン率を約20%高めている。それは、データを利用して手動で対象者を絞るという作業によってだった。だがそれは小さな集団だった。Salesforce Einsteinはこの作業を強化するだろう」(ミューア氏)
他にも、データの照合と分析に必要な手作業が50%削減されるといったメリットも期待している。「Salesforce Einsteinは対象を絞った活動において常にこのような作業を行うため、Salesforce Einsteinの関与は妥当かつ時宜にかなったものになる」とミューア氏は述べる。また、各販売担当者が金融アドバイザーに情報を提供するのにかかる時間は週当たり3.5時間削減されると予測している。さらに、Salesforce.comの自然言語処理ソフトウェア「Einstein Voice」の導入によって削減できる時間が倍増することも見込んでいる。
Pregisの事業変革
PregisがSAPのAIアプリケーション「SAP Leonardo」を利用する目的は、米国の包装業界におけるソリューションプロバイダーとしての活動を広げるためだ。 米イリノイ州に拠点を置く同社は3年ほど前に、包装製品の製造と顧客製品をオンサイトで包装する機械を提供する純粋な包装メーカーからの転換を始めた。現在、同社は開梱(かいこん)作業の簡易化と内容物の損傷低減によって収益を高めるためにコンサルティングアプローチを行っている。
SAP Leonardoの採用によって最終的にPregisが市場を変え、業界にさまざまなイノベーションをもたらすことを望んでいると同社のバイスプレジデントとCIO(最高情報責任者)を兼任するジェフ・ミューラー氏は言う。その一例として同氏はタイヤ業界を挙げる。タイヤ業界は顧客にタイヤを販売するだけでなく、無料点検や有料保証など、さまざまなサービスを提供している。
同社はこの目標をどのように達成しようとしているのだろうか。同社は包装機械の予知保全作業から得た情報を利用して、SAP Leonardoでパターンと傾向を探そうと考えている。Pregisが今後1年半の間にやろうと考えているのは、在庫状況に関する優れた洞察を流通パートナーに提供し、従業員を付加価値の高い作業に再配置できるようにすることだ。
顧客の敷地にある包装機械から予知保全データを取得して利用し、顧客が自社流通センターの生産性把握をサポートするという長期目標もある。
だが、同社の戦略はまだ初期段階だ。同社は2019年10月末にモノのインターネットベースのSAP Leonardoサービスから機械学習ベースのPaaS版への移行を始め、2020年1月中旬の稼働を予定している。
「当社は事後保全から予防保全、そして予知保全へ移行しつつあるが、機械学習についてはまだデータ戦略の初期段階にある」とミューラー氏は言う。
同社は予知保全への移行によってコストを大幅に削減できると期待している。Pregisは最近6件の買収を行ったが、保全作業に費やす時間を10%削減することで現場の作業チームの数は増やさない予定だ。
「次の段階は、機械の利用状況を監視して自動補充し、請求する結果として得られる収益の増加だ」とミューラー氏は結論付けている。
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Computer Weekly日本語版
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