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コロナ禍で中小企業が「クラウドERP」を導入する意義と注意点とは中堅・中小企業とクラウドERP【後編】

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、中堅・中小企業の「クラウドERP」導入にどのような影響をもたらすのか。導入検討時に想定すべきメリットと注意点を探る。

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ERP | クラウドERP | クラウドサービス


 予算の関係でオンプレミスの「ERP」(統合業務)製品(以下、オンプレミスERP)を所有できない中堅・中小企業にとって、ERP製品の機能をクラウドサービスとして利用できる「クラウドERP」は手頃で検討しやすく、事業継続性にも寄与する可能性がある。前編「中小企業がコロナ禍で実感した『クラウドERP』のメリットとは?」で紹介したように、クラウドERPの導入により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の問題が生じても問題なく事業を継続できた中堅・中小企業は少なくない。ただしクラウドERPを導入する際は、注意すべき点もある。

 「多くのCIOは疲弊している」と、製造業・流通業向けERPベンダーDeacomの最高執行責任者(COO)であるスコット・ディーキンス氏は語る。CIOが考慮すべき対象は、システムのユーザビリティやセキュリティ、稼働時間などさまざまだ。オンプレミスERPではなくクラウドERPを選択すれば「懸案事項が1つ少なくなる」と同氏は指摘する。

クラウドERPの可能性と注意点

 DeacomのクラウドERPは、特定のレシピを基にした医薬品や飲料などの製造工程で使用する「プロセス製造」に焦点を当てている。プロセス製造業は、バックオフィス部門の従業員を在宅勤務などのテレワークに移行させることはできても、生産と倉庫保管に携わる従業員をテレワークに移行させることは難しい。

 クラウドERPはWebベースのシステムなので、オンプレミスERPのようにITインフラ維持に重点を置く必要がなく「ビジネスを継続するための行動に集中できるという点で、有利な立場にある」とディーキンス氏は語る。実際、同社クラウドERPのユーザー企業のほとんどは、業績を向上させているという。

 ERPベンダーEpicor SoftwareのCEOであるスティーブ・マーフィー氏によると、クラウドERPへのニーズは高まっている。ERPベンダーは製造業や流通業などさまざまな業種向けに、オンプレミスERPやクラウドERPを提供している。「クラウドERPなら工場やオフィスの外で作業できるし、誰かを社内に呼び出してCOVID-19の感染リスクを心配する必要もない」と同氏は語る。「コアビジネスの遂行ではなく、危機を乗り越えることをERP製品導入の主な目的に据える企業は『危機について全く心配しなくてもいいようにしたい』と考えている。そうした企業はクラウドERPに目を向ける」(同氏)

パートナー選びは慎重に

 「クラウドERPの普及にはもう少し時間がかかる」とディーキンス氏は予想する。コンサルティング会社Denver Tech Advisors(「ERP Advisors Group」の名称で事業展開)の創設者兼管理責任者であるショーン・ウィンドル氏は「ほとんどの中堅・中小企業はシステムを稼働させるためにパートナーのIT企業に依頼するため、パートナーは慎重に選択する必要がある」と語る。COVID-19危機の発生以前もパートナー選定は重要な課題だったが、今はその重要性がさらに高まっているというのが、ウィンドル氏の認識だ。

 ウィンドル氏によると、パートナー選定の際はシステムそのものだけを評価するのではなく、実装ノウハウを有しているかどうか、業種に精通しているかどうかを確認するのは当たり前であり、さらに業務能力も確認する必要がある。現在IT企業は総じて非常に多忙なため、彼らが受注できる余地が減っている可能性があるからだ。「当面の間、継続できるパートナーを選ぶことが重要だ」(同氏)

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