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「脱クラウド」「オンプレミス回帰」で見落としてはいけない“2大コスト”「脱クラウド」の要否【後編】

コスト削減が「脱クラウド」の主な理由ではなくても、脱クラウドによるコストの変化を把握することは重要だ。当然ながら脱クラウドの作業そのものにも、それなりのコストがかかる。どのようなコストが発生するのか。

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 コンサルティング会社Amalgam InsightsのCEO(最高経営責任者)を務めるヒョン・パク氏によると、いったんクラウドサービスに移行させたシステムをオンプレミスのインフラへと回帰させる「脱クラウド」を実行した企業のうち、コストだけを脱クラウドの理由として挙げる企業はあまりない。ただし「数年にわたって年間数百万ドルのコストを削減できるとしたら、話は別だ」とパク氏は話す。コストを計算する際は、技術管理、ネットワーク、システムの可用性、セキュリティ、ハードウェアのリプレースなどに関するコストをそれぞれ考慮する必要がある。

 脱クラウドによるコスト削減効果を適切に見積もるためには、脱クラウド自体にかかるコストも把握することが不可欠だ。どのようなコストが発生するのだろうか。

脱クラウドのコスト1.データの「エグレス」やハードウェアのコスト

 コンサルティング会社Protivitiのランディ・アームキネクト氏は、脱クラウドで発生する可能性があるコストを見積もる際に、データのエグレス(出力)を考慮しなければならないと指摘する。移行対象のデータが膨大な量になる可能性があるためだ。クラウドサービスで無秩序に拡張した仮想マシンやコンテナを運用するための、新しいハードウェアの調達コストも無視できない。IT部門は脱クラウドが合理的なのかどうかを的確に判断する必要がある。

 オンプレミスのインフラを構築する際は、ハードウェアを購入することが基本だ。ハードウェアの減価償却がIT関連支出にどう影響するかも確認する必要がある。

脱クラウドのコスト2.ダウンタイムに伴うコスト

 脱クラウドのコストが高くつく可能性があることも忘れてはならない。コンサルティング会社Enterprise Strategy Group(ESG)のスコット・シンクレア氏によると、システムをオンプレミスのインフラに戻した組織の約43%が、ダウンタイム(システムの停止・中断時間)関連のコストを経験している。

 重要なのは脱クラウドを実行する時期だ。事業運営に不可欠な特性を持つシステムである場合、移行時期は特に重要になる。脱クラウドに伴うダウンタイムの大きさや、ダウンタイムがどのようなコストを発生させ、どう対処できるのかは、脱クラウドをするシステムのデータ量やオンプレミスのインフラで利用するハードウェアの特性に左右される。

脱クラウドに踏み切る前に考慮すべき点

 脱クラウドに伴うシステムの移行作業も、移行先のオンプレミスのインフラ構築も容易ではない。脱クラウドを実行に移す際に「特に考慮する必要がある」とパク氏が指摘するのは、以下の項目だ。

  • ネットワーク帯域幅(回線容量)とコスト
  • ストレージ
  • プロセッサ
  • データアーカイブのコスト
  • 物理とデジタルの包括的なセキュリティ対策
  • 関連技術の運用とメンテナンスに携わる人材のコスト

 Amalgam Insightsは、クラウドサービスを利用する企業が脱クラウドの対象とするシステムは、今後も一部にとどまると予測する。「脱クラウドは特定のシステムの運用を改善するのに適した戦略になるはずだ」とパク氏は語る。

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