中小企業が「HCI」を選び、大企業が「コンポーザブルインフラ」を好む理由:垂直統合型インフラにすみ分けの動き
「ハイパーコンバージドインフラ」(HCI)や「コンポーザブルインフラ」といった垂直統合型インフラの選択肢が充実してきた。こうした中、ユーザー企業の規模に応じた選択肢のすみ分けが起こりつつある。
インフラ構築に必要なハードウェアやソフトウェアを集約した垂直統合型インフラの選択肢が多様化する中で、企業規模によって選択肢のすみ分けが進んでいるという見方がある。中堅・中小企業が「ハイパーコンバージドインフラ」(HCI)に魅力を感じる一方で、大企業はHCIには見切りを付け、「コンポーザブルインフラ」により注目しているという見方だ。なぜこのようなすみ分けが起こっているのか。
「HCI」は中堅・中小企業に人気だが……
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大企業がコンポーザブルインフラに魅力を感じる理由はシンプルだ。コンポーザブルインフラはオンプレミスのインフラに、必要に応じてリソースを配備できるクラウドサービスのような柔軟性をもたらすことができる。これが大きな理由だ。
コンポーザブルインフラは、アプリケーションに対するリソースの配備や管理を標準化する仕組みをベースにしている。企業のアプリケーションが稼働する場所は主に3つある。物理サーバ、仮想マシン、コンテナだ。これまでIT部門は、それぞれの稼働場所に合わせたアプリケーションを個別に管理しなければならなかった。
ハードウェアのリソースをプール(共有)できることが、コンポーザブルインフラの特徴だ。管理者はそのプールから、アプリケーションが物理サーバ、仮想マシン、コンテナのいずれで実行されるかにかかわらず、必要に応じてリソースを割り当てることができる。同一のインタフェースであらゆるリソースの配備や管理が可能だ。
コンポーザブルインフラは登場してまだ間もないが、ビジネスのアジリティ(敏しょう性)を実現するインフラとして期待されている。導入にかかるコスト、運用に専門のスキルが求められる複雑さなどから、現状は中堅・中小企業よりも大企業にとってより魅力的な選択肢になっている。
インフラの簡素化を目的に開発されたHCIは、コンポーザブルインフラよりも歴史が長い。HCIは通常、サーバ、ネットワーク、ストレージを一体化した筐体に加え、ハイパーバイザーと管理用のソフトウェアなどによって構成される。ハードウェアとソフトウェアは相互運用性が保証され、1つのSKU(Stock Keeping Unit:受発注の単位)として販売される。
HCIはそのシンプルさをメリットとして、より中堅・中小企業に好意的に受け入れられた。購入、導入、スケーリング(規模の拡縮)が容易である点、必要なときに簡単にベンダーサポートを受けられる点などが、特に中堅・中小企業にとっては魅力的に映った。
ところが中堅・中小企業がHCIを導入する上で、障壁になる点も出てきた。価格だ。HCIは当初、サーバ、ネットワーク、ストレージを個別に構築する3層型のインフラに代わる安価な選択肢として販売されていた。だが徐々に価格が上昇し、HCIを導入するのに数十万ドルかかることも珍しくなくなった。
中堅・中小企業市場において、HCIは比較的規模の大きな企業に採用される傾向にある。小規模の企業の間で、価格を理由にしてHCI導入を断念するケースが目立ってきたのだ。こうした小規模な企業は、その代わりに低コストで導入可能なオープンソースのHCIソフトウェアで構築したり、クラウドサービスを利用したりしている。
HCIは中堅・中小企業のみが採用しているわけではなく、大企業も導入している。だが大企業の市場では、最近はHCIよりもコンポーザブルインフラに関心が移っているようだ。大企業の間ではコンポーザブルインフラとHCIの両方が利用されることになるだろう。
ただし大企業がコンポーザブルインフラとHCIを利用する目的は異なる。コンポーザブルインフラは、仮想マシンやコンテナによる複数のアプリケーションの運用に向いている。一方HCIは、単一用途向けのシステム運用環境、あるいはプライベートクラウド用のインフラに適している。
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