曖昧になるインフラ【前編】
「真のHCI」とは何か? 「CI」との違いを見極める方法
さまざまなHCI製品が登場するにつれて、CI製品とHCI製品の境界線が曖昧になってきた。最近登場した製品を含めて、HCI製品の特徴を整理する。
「コンバージドインフラ」(CI)製品と「ハイパーコンバージドインフラ」(HCI)製品の違いが曖昧になってきた。最近は名称にHCIを含む製品も登場している。ただし製品名にHCIを含むだけで実際には本来のHCI製品の定義を満たしておらず、CI製品に分類した方が適切である製品が少なくない。
例えばNetAppの「NetApp HCI」という製品がある。これはサーバとストレージシステムを別々の筐体として組み合わせた製品で、CI製品の構成に近い。ストレージシステムにはフラッシュストレージを採用した「NetApp SolidFire」を使用する。
Hewlett Packard Enterprise(HPE)の「HPE Nimble Storage dHCI」はフラッシュストレージシステム「HPE Nimble Storage」とラックサーバ「HPE ProLiant DL」を組み合わせている。構成はNetApp HCIによく似ていてCI製品に近い。
「CI製品に似た製品は、HCI製品に求められる拡張性などの一般的なニーズを満たすことが難しい」と指摘しているわけではない。定義上は本来のHCI製品ではないということだ。
NetApp自身はNetApp HCIについてオンプレミスで運用する「ハイブリッドクラウドインフラ」だと説明している。HPEはHPE Nimble Storage dHCIの製品名に「d」を付けている。これは「disaggregated」(分離型)の頭文字になっていて、構成要素が分離していることを表現している。つまり製品名にHCIを含むものの、アーキテクチャはサーバとストレージシステムが分離しているため、もはや本来のHCI製品には分類できない。
再定義を迫られるHCI
調査会社IDCはこうした新たな製品が登場している事実を受けて、HCI製品を定義し直している。IDCは2019年6月に、同社が追跡するHCI製品として分離型の製品を追加した。IDCは分離型のHCIについて「CPUやメモリといったコンピューティングリソースとストレージリソースを個別に追加できる非線形の拡張可能なクラスタ」だと定義している。
Microsoftが2019年に発表した「Azure Stack HCI」は、同社のOSや管理ソフトウェアと、サードパーティーベンダーによる検証済みのハードウェアを組み合わせたHCI製品群だ。Azure Stack HCIは注目すべきHCI製品群だが、注意点もある。Azure Stack HCIは2019年に突然登場したわけではなく、実態はMicrosoftが「Windows Server Software-Defined」(WSSD)として提供してきたHCI製品群をベースにしている。パブリッククラウドの「Microsoft Azure」の名前を使って名称を変えただけだ。
HCI製品の定義を踏まえると、Azure Stack HCIは「真のHCI製品」だと言える。真のHCI製品は、1つの筐体にコンピューティングリソースとストレージリソースを搭載し、サーバが内蔵するストレージを仮想化して共有ストレージシステムとして利用する製品を指す。
Azure Stack HCIは基本的なHCI製品の特徴をWSSDから引き継いでいる。MicrosoftのサーバOS「Windows Server 2019」の仮想環境向けエディションである「Datacenter」エディションをベースにしており、
- ハイパーバイザー「Hyper-V」
- ソフトウェア定義ストレージ(SDS)機能「記憶域スペースダイレクト」(S2D:Storage Spaces Direct)
- ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)機能
などを搭載する。
アーキテクチャはCI製品に近いのに、HCI製品として売り出されているものは、ここで挙げたNetApp HCIやHPE Nimble Storage dHCIに限らない。Datriumが提供するCI製品「Datrium DVX」もHCI製品として説明されている場合がある。HCI市場が拡大する一方でCI市場が縮小しているため、ベンダーにとってCI製品の魅力が失われていることが、こうした現象の背景にあると考えられる。
CI製品とHCI製品がさまざまな用途で同じようにニーズを満たせることは確かだ。CI製品もHCI製品もアプリケーションを運用するインフラであり、プライベートクラウドを構成したりパブリッククラウドと連携したりできる。ただしHCI製品の導入を失敗させないためには、検討中の製品が真のHCI製品であるかどうかを見極めることが重要だ。
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