IBMが「OpenShift」「Ansible」などのRed Hat製品を取り込む“本当の狙い”:「Power Systems」の変化に潜むIBMの狙い【後編】
IBMはサーバ製品群「IBM Power Systems」と、「OpenShift」や「Ansible Automation」といったRed Hat製品を組み合わせた提案を進めている。その狙いとは。
IBMはサーバ製品群「IBM Power Systems」に従量課金型の料金体系を取り入れてクラウドサービスとの親和性を高め、オンプレミスのインフラとクラウドサービスを組み合わせたハイブリッドクラウドでのアプリケーション運用を支援しようとしている。それと同時に、同社はIBM Power Systemsと併せて、Red Hatのコンテナ管理システム「Red Hat OpenShift Container Platform」(OpenShift)や構成管理ツール「Red Hat Ansible Automation Platform」(以下、Ansible Automation)、IBMのマルチクラウド管理ツール「IBM Cloud Paks」をユーザー企業に提案しようとしている。何が狙いなのか。
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コンテナ市場の動向
調査会社IDCのピーター・ルッテン氏は「IBMにとって、IBM Power Systemsとクラウドサービスを連携させてアプリケーションをうまく運用できるようにすることが重要だ」と話す。IBMはオンプレミスのインフラとクラウドサービスの双方に注力しているからだ。「IBM i」や「Linux」を搭載するIBM Power SystemsとOpenShiftを連携させることで「オンプレミスのインフラ側に、コンテナを使ったクラウドネイティブのアプリケーションを導入しやすくしている」とルッテン氏は語る。
IBM製品とRed Hat製品の連携の狙い
「Ansible AutomationをIBM製品と連携させることで、IT運用自動化を企業の組織内に広げようとしている」と、IBMのダイラン・ボディー氏は話す。Ansible Automationによって、IBM Power Systemsだけでなくメインフレーム「IBM Z」やx86サーバにまたがる統合的な運用自動化が実現する。「組織内に一貫した自動化のスキルとプロセスがあれば、事業部門はトレーニングのコストを削減でき、IT部門は新しい開発プロジェクトに取り組む余裕が生まれる」とボディー氏はそのメリットを話す。
IBMは同社のクラウドサービス群「IBM Cloud」でより多くのアプリケーションを運用できるように、IBM Cloudの機能拡張も進めている。同社がIBM Cloudを運用するデータセンターには、インメモリデータベースシステム「SAP HANA」の運用環境としてSAPの認定を取得しているサーバもある。
Red HatとIBMが大部分において独立した運営を保ちつつ、両者の製品やサービスを組み合わせて提供する動きを歓迎するアナリストもいる。調査会社Gartnerのダニエル・バウワーズ氏は「Red HatはOpenShiftとAnsible Automationで大きな実績を築いている」と指摘。IBMが自社の適切な製品に、こうしたRed Hatの実績を取り入れることができれば「両社にとって大きなメリットになる」とみる。
現在のような新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が広がる中では「クラウドサービスの強化と、低コストのハードウェア製品の組み合わせを訴求する絶好の機会になる」とIBMの関係者は考えているようだ。IBMのスティーブ・シブリー氏は「IT運用に混乱をもたらす事態に直面したことで、回復力を高める方法を見直す企業の動きが広がっている」と言う。「ハイブリッドクラウドによる機能強化は、大量のデータを扱うアプリケーションに適した運用環境を見つける方法の一つになる」(シブリー氏)
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