「WildFly」「JBoss EAP」の基本的な違いは? Java2大APサーバ比較:歴史から探る相違点と類似点
「Java」のアプリケーションサーバ「WildFly」と「Red Hat JBoss Enterprise Application Platform」(JBoss EAP)は何が違うのか。両者には共通する部分は多いものの、明確な違いがある。
「WildFly」と「Red Hat JBoss Enterprise Application Platform」(JBoss EAP)という、Red Hatが管理する2つのアプリケーションサーバ(APサーバ)がある。両者は何が違うのか。
JBoss EAPのオープンソースソフトウェア(OSS)版は、以前「JBoss Application Server」(JBoss AS)という名称だった。この2つの名称が似ていたことが、あまりにも広範に混乱を引き起こした結果、Red HatはJBoss ASの名称をWildFlyに変更した。
かつてJBoss EAPの新しいバージョンはJBoss ASをベースに構築されていた。それはJBoss ASの名称がWildFlyに変わった現在も変わらない。以下でWildFlyとJBoss EAPの歴史を整理し、両者の類似点と相違点を紹介しよう。
WildFlyとJBoss EAPの関係
JBoss EAPは「Jakarta EE」準拠のプロプライエタリアプリケーションサーバで、Red Hatが商用サポートを提供する。Jakarta EEとは、プログラミング言語および開発・実行環境「Java」の企業向け仕様群「Java Enterprise Edition」(Java EE)のオープンソース版で、Java EEと互換性を持つ。単純に言えばJBoss EAPはWildFlyの商用版にすぎない。
Red Hatでアプリケーション開発・デプロイ支援ミドルウェア「Red Hat Runtimes」の技術製品マネジャーを務めるジェームス・フォークナー氏によると、WildFlyはJBoss EAPを構築する土台となるアップストリーム(上流)プロジェクトだ。「JBoss EAPの新機能の多くは、まずWildFlyで実装される」(フォークナー氏)
JBoss ASの最後のメジャーバージョンは「JBoss AS 7」だった。このバージョンが準拠していたのは「Java EE 6」だ。WildFlyに名前を変えた最初のバージョン番号は8で、「Java EE 7」に準拠していた。2020年6月公開の「WildFly 20」は「Jakarta EE 8」準拠であると同時に「Java EE 8」に準拠している。
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WildFlyとJBoss EAPの相違点
開発者は、WildFlyを「JBoss EAPの新機能が生まれる土台」だと考えることができる。WildFlyは、ソフトウェアの開発プロセスを自動化する「継続的デリバリー」(CD)モデルを採用しているため、JBoss EAPよりもバージョンの更新が頻繁だ。つまりWildFlyユーザーは、JBoss EAPに新機能が加わったバージョンの公開を待たずに、その新機能を使ったり、最新バージョンについてのフィードバックを提供する機会を得たりできる。WildFlyと比べて、JBoss EAPのバージョンアップ頻度ははるかに少ない。
名称 | WildFly | JBoss EAP |
---|---|---|
ベンダー | Red Hat | |
Java EEとJakarta EEへの準拠 | ○ | ― |
ライセンス | GNU Lesser General Public License(LGPL) | |
サブスクリプション形式の料金体系 | ― | ○ |
利用可能言語 | Java | |
Eclipse MicroProfile | 組み込み済み | 拡張パックが必要 |
API(アプリケーションプログラミングインタフェース)の観点から見たWildFlyとJBoss EAPの大きな違いは「Eclipse MicroProfile」の利用方法にある。Eclipse MicroProfileは、マイクロサービスアーキテクチャ(独立性の高い小規模のサービスを組み合わせるアプリケーション構造)に基づいたJavaアプリケーションを開発するための仕様群だ。WildFlyはEclipse MicroProfileに基づく機能を利用するためのAPIを標準で含む。JBoss EAPでEclipse MicroProfile準拠のAPIを利用するには、そのための拡張パック「JBoss EAP XP」(Eclipse MicroProfile Expansion Pack)をインストールしなければならない。
WildFlyとJBoss EAPの違いで重要な要素は他にもある。Red HatがJBoss EAPだけにサブスクリプション形式の課金体系を提供している点だ。他の要素はアプリケーションサーバを比較する際の一般的な項目にすぎない。WildFlyとJBoss EAPは相違点よりも共通点の方が多いと言える。
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