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“永遠の二番手”「AMD」がIntel、NVIDIAを追い抜く日M&Aに乗り出す半導体3社の思惑【第1回】

AMD、Intel、NVIDIAの主要半導体ベンダー3社がそれぞれ同業の買収を決断した。AMDは約350億ドルを投じてXilinxを買収することを決めた。プロセッサ市場におけるAMDの狙いとは。

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 AMD(Advanced Micro Devices)、Intel、NVIDIAの半導体ベンダー3社は、同業の企業買収を発表した。これらの買収は、3社それぞれの強みと戦略を補完するものだ。

 x86系プロセッサ市場で、長年Intelに次ぐ二番手の存在だったAMDは、同業のXilinxの買収という大胆な戦略を2020年10月に発表した。AMDはXilinxの全株式を約350億ドルで取得するこの買収により、CPUとGPU(グラフィックス処理プロセッサ)に加え、FPGA(Field Programmable Gate Array)やSoC(System on a Chip)などの製品ポートフォリオを獲得する(注)。AMDはこの新しい製品ポートフォリオでクラウドコンピューティングやエッジコンピューティング分野での勢力拡大を狙う。

※注:FPGAは特定の用途向けにプログラム可能な集積回路、SoCはCPUに加えてマイクロコントローラーなどシステムを機能させるために必要な要素をまとめて搭載した集積回路を指す。

AMDがM&Aで二番手脱却 そして頂点へ

 アナリストは、この買収でAMDのビジネスチャンスが広がるという見方を示す。特にAMDが重視しているのは、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC:高性能計算)市場だという。

 「AMDの事業はリサ・スーCEO(最高経営責任者)の下で躍進しているが、Intelと比べると事業規模は小さい。企業向け市場やデータセンター市場ではなかなか勝てない」と、調査会社Pund-ITのプレジデント、チャールズ・キングは指摘する。AMDはXilinxの買収でこうした状況を打開し、変化の激しいPC市場やゲーム市場への依存を減らせる可能性がある。

 クラウドやエッジコンピューティング市場で競争するために、AMDはソフトウェアおよびハードウェア開発に投資している。ただし資金力が豊富なIntelやNVIDIAには及ばない。「AMDがAI(人工知能)技術の価値を理解しているのは確かだ。だが現時点でAMDはAI技術開発に投下するリソースをIntelほど持っていない」(キング氏)

 それでもAMDが処理性能の向上に力を入れていることは実を結んでいる。調査会社Statisticaのレポートによると、2020年第3四半期(2020年7月〜9月期)のx86系プロセッサ市場におけるIntelのシェアは、前四半期の64.9%から62.7%に低下したのに対し、AMDのシェアは35.1%から37.3%に上昇した。2020年10月には、AMDはデスクトップPC向けプロセッサ「AMD Ryzen 5000」シリーズをリリースした。AMD Ryzen 5000シリーズはCPUコアを最大16個備え、大量データの高速処理が必要なアプリケーション向けに設計されている。

 AMDはビデオカード(GPU搭載の拡張ボード)も強化しており、ゲーミングPC向けの新しいGPUアーキテクチャ「AMD RDNA 2」に基づくビデオカード「Radeon RX 6000」シリーズを2020年10月に発表した。AMDは、コードネーム「Big Navi」として開発を進めてきたAMD RDNA 2で、GPU市場におけるNVIDIAの牙城に風穴を開けることを狙っている。

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