小児がん研究と「グラフデータベース」の可能性【後編】
医学データ分析における「リレーショナルデータベース」の限界とは
デンマーク工科大学は、小児急性リンパ性白血病の研究データ処理にTigerGraphのグラフデータベース製品群を採用した。その理由は。従来のリレーショナルデータベースにはどのような「限界」があるのか。
小児急性リンパ性白血病の診断率と治療率を向上させるための研究に、グラフデータベースを活用しているデンマーク工科大学(Technical University of Denmark)。前編「デンマーク工科大学が小児がん研究に『グラフデータベース』を活用する理由」に続く後編は、同校におけるグラフデータベースの具体的な役割を解説する。
リレーショナルデータベースの限界、グラフデータベースの可能性
デンマーク工科大学のDepartment of Health Technology博士課程に在籍するイェスパー・ヴァング氏の研究チームが目指しているのは、小児がんの原因究明だ。「プロジェクト前進の鍵となるのは、私たちが持つ全ての知識を統合し、モデル化することだ」とヴァング氏は話す。この知識の統合とモデル化には、グラフデータベースが中心的な役割を果たしている。
一般的なデータベースであるリレーショナルデータベースは、データ同士の直接的な関係性を把握することに向いている。デンマーク工科大学の小児がん研究における全てのデータ間の複雑な関係性を把握するには、リレーショナルデータベースでは不十分だった。同校の研究は概して間接的な関係性を含んでいたからだ。
グラフデータベースなら、間接的な関係にあるデータ同士を結ぶことができる。「グラフデータベースはランダムな問いにも答えられる」とヴァング氏は評価する。同士によると病院では、医師が何かの疑問を抱いて「その答えはデータのどこかにあるはずだから、何らかの回答が得られるはずだ」と考えることがよくある。そのようなときにデータが存在していてパスが通っていれば「グラフデータベースによる分析で、より多くの疑問に答えられる」と同氏は語る。
ヴァング氏によると、リレーショナルデータベースは複雑でも小規模な医学データなら効率よく扱えるが、データ量や関係性の種類が増えるにつれ効率が落ちる。それに対してグラフデータベースでは効率を維持できるという。デンマーク工科大学が導入したデータ分析ソフトウェアベンダーTigerGraphのグラフデータベース製品群は、新しい情報源を追加して拡張できる。そのため情報源を新規に追加するたびにデータベースを定義し直す必要がない。
デンマーク工科大学の研究は今も進行中であり、小児急性リンパ性白血病の診断と治療の改善につながる研究結果はまだ出ていない。しかしTigerGraphが2021年9月に開催する次回の「Graph + AI Summit」では結果を発表できる見通しだという。
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