「5G」でスマート工場を造るEricssonやJohn Deere 無線LANはもう不要なのか?:各業界で「無線LAN」を補う「5G」【前編】
無線LANに加えて、今後各業界は5Gを広く使うようになるとの見方がある。既に先進的な製造業は5Gの活用に着手している。その一例を見てみよう。
AI(人工知能)技術やブロックチェーンに並んで、「5G」(第5世代移動通信システム)は業界で最も注目されている話題の一つだ。5Gがその真価を発揮するようになれば、データ伝送の高速化や大容量化、低遅延化が実現し、全く新しいアプリケーション実現への道が開ける。確かに5Gは注目に値する技術だが、まだ登場したばかりだ。
「5Gが『無線LAN』を代替する」という見方が存在する。この主張に根拠はない。大学のキャンパスや病院から、標準規格「IEEE 802.11」準拠の無線LANの機器が消え、5Gが代替している状況を想像できるだろうか。それは非現実的な話だ。
現実的には、無線LANと5Gは当面の間は共存する。ユーザーはそれぞれ異なる用途に使用すると同時に、併用することになるだろう。5Gが無線LANを補う実例として、各業界の取り組みを紹介する。
5Gがスマートファクトリーの主要手段に 無線LANはどうなる
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学校の無線LAN活用例
製造業は5Gの影響を大きく受ける業界の一つだ。5Gが製造業における次の産業革命を引き起こす可能性がある。工場における無線ネットワークとしては無線LANが一般的だ。一方では5Gが下支えする「スマートファクトリー」(生産機器をネットワーク接続することで生産効率を高める工場)の波が到来している。調査会社Capgemini Research Instituteの報告書「Smart Factories @ Scale」によると、スマートファクトリーは2023年までにGDP(国内総生産)を年間1兆5000億〜2兆2000億ドル押し上げる可能性がある。そのチャンスは絶大だ。
5Gは製造業に多大な恩恵をもたらす。モバイルデバイスやロボットを5Gに接続して利用すれば、生産プロセスの自動化促進や製造効率の向上につながる。例えばテキサス州ルイスビルにある、通信機器ベンダーEricssonの工場は5Gを活用している。この工場では、組み立てや梱包(こんぽう)といった時間のかかる生産プロセスに、ドローンや自律走行するカートを使用している。
「John Deere」のブランド名で知られる農業機械ベンダーのDeere & Companyは、工場の生産効率を高めるために約50万ドルを投資して5Gのプライベートネットワークを導入した。同社が5Gを活用するのは、従来の有線ネットワークよりも製造ラインの生産性を高めることができるからだ。同社は従業員の安全性を確保するために、工場の稼働状態を可視化するシステムにも5Gを活用している。
こうした活用例が出てきている一方で、製造業が導入しているその他の無線ネットワークを全て5Gに置き換えることは困難であり、その必要もない。特に無線LANは、工場で使うための無線ネットワークの現実的な選択肢として、幅広い企業のニーズを満たしている。
今後起こる可能性が高いシナリオは、工場が無線LANと5Gを併用することだ。企業は用途や必要になる帯域幅のニーズに従って、無線LANと5Gをそれぞれ利用する方法を採用すると考えられる。
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