RPA製品選びに重要な8つのポイント:改めて考えるRPA導入【後編】
最適なRPA製品を選ぶために、サプライヤーに質問すべき8つのポイントを紹介する。これによってサプライヤーの戦略や製品の方向性を知ることができる。
前編(RPAが適しているもの/適していないもの)では、RPAが有用なケースと役に立たないケースの例を紹介した。
後編では、RPA導入プロセスにおける注意点と、RPAの選定に際してサプライヤーにすべき8つの質問を紹介する。
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RPAへの着手
自動化に適したタスクやプロセスを特定するには、まずプロセスを見つける必要がある。これには、多くのRPAツールに含まれているプロセスレコーダーが役立つ。プロセスレコーダーは、例えば請求書の受領と処理に必要なマウスクリックの回数やコピー&ペースト操作など、プロセスを完了するためのイベントと手順をキャプチャーする。
プロセスを見つける作業の一環として、自動化によって得た節約時間を評価することも重要だとUiPathのタン氏は言う。
「自動化の取り組みに100時間をかけて、1カ月に30分節約できるプロセスを自動化したいとは考えないだろう。プロセスを見つける際は自動化の全体的なメリットも評価する必要がある。自動化はSLA(サービスレベル契約)に役立つのか、顧客満足度の向上に役立つのか、運用コストの削減に役立つのかといったことを評価する」
RPA導入の工程が進むにつれ、成功度を測定して成果を評価できるスコアボードを管理することもタン氏は提案する。「プロセスを選び、そのプロセスを自動化して、成功度を測定してからRPAイニシアチブを拡張するようアドバイスをする」
IBMのオン氏によると、AI、データキャプチャー、ビジネスルール、ワークフロー管理が関係する高度な自動化の一環としてRPAを組み込む場合は、プロセス全体の計画や精査が追加で必要になるという。
「自動化に最も適していてROI(投資利益率)の向上につながるタスクを最初に見極めることが重要だ。そうすれば、RPAではなく他のソリューションを検討するのが賢明なのか、手動でタスクを実行し続けるのが正しいのかを判断するのに寄与する」(オン氏)
RPAの進化
Gartnerは2019年に「ハイパーオートメーション」(hyperautomation)という用語を生み出した。ハイパーオートメーションは、RPAなどの自動化機能を個別またはAIと連携させた形でデプロイするのに役立つ高度な技術と1つのフレームワークで構成される。
RPAサプライヤーはこの必要性を認め、具体的なユースケースとワークフロー用に設計した構築済みAIモデルを含める準備を進めている。構築済みAIモデルの例には、融資組成、銀行での不正処理の検出とマネーロンダリング防止、保険業務での保険請求処理などがある。
RPAの進化に関するGartnerのレポートによると、RPAサプライヤーが作成するAIモデルは大きな価値を提供するという。一般に、RPAのスクリプトは「if then」形式の指示で定義されるシンプルなワークフローに限定される。数百もの異なるデータポイントを処理する必要がある複雑なワークフローでは、何千もの分岐を持つ「if then」形式のツリー構造を伴う複雑なスクリプトが必要になる。
Gartnerのレポートは、1つのワークフローで多数のデータポイントを処理できるAIモデルを追加すれば、ますます複雑化するビジネスプロセスにRPAを適用できると指摘する。こうした進化を利用するには、多くの場合はシステムインテグレーターからAIモデルを購入する必要がある。購入しないでAIモデルを構築することも可能だが、その場合は高いコストをかけてプログラマーやデータサイエンティストを雇用する必要がある。
自動化を軸にプラットフォームやシステムが変化するのに伴い、ユーザー企業にはRPAスクリプトとAIモデルの両方を保守する必要が生まれる。RPAサプライヤーが自社の自動化ソリューションの一環として構築済みAIモデルを提供すれば、ユーザー企業はAIの開発と保守の課題を最小限に抑えることができる。
ユーザー企業は、AIモデルに統合されたRPAスクリプトによってより複雑なユースケースを自動化できるようになり、その自動化プログラムのスケーラビリティを向上させることが可能になる。
プロセスを見つけてドリルダウンするのに役立つツールを提供するRPAサプライヤーも増えている。こうしたツールを使ってシステムログやユーザーデスクトップのアクティビティーからのデータを分析し、ビジネスプロセスマップを作成する。
Gartnerのレポートは次のように指摘している。「ビジネスプロセスの運用を文書化していない企業にとって、プロセスマップの自動作成機能には高い価値がある。こうした技術がなければプロセスマップが不完全になったり不正確になったり、将来的に作業のやり直しや信頼性の問題につながったりすることが多くなる」
RPAサプライヤーにすべき重要な質問
IBMのオン氏は、RPAサプライヤーにすべき重要な質問が8つあると言う。
- 単なるRPAプロバイダーか、それともRPAを大きな自動化戦略の一部と考えているか
- 自動化製品はどの程度の範囲で統合されているか
- 統合の機会を見つけ、最善の行動方針を推奨できるか
- 自動化のレベルを上げる明確なロードマップはあるか
- セキュリティとコンプライアンスの要件を満たしているか
- 導入企業のタスクやプロセスのマッピング、優先順位付け、文書化を支援する専門知識はあるか
- 提供されるRPA製品はbotの開発やテスト、デプロイの管理、例外事項の監視と処理を行うツールを提供するか
- ビジネスの最適化とエンタープライズコンピューティングに優れた実績はあるか
「RPA以上」の機能への移行を容易にするため、ソフトウェアやサービスの広範なポートフォリオを提供できるサプライヤーを探すことに価値があるとオン氏は指摘する。そうすれば、RPAを利用しながらプロジェクトを拡大できると同氏は補足する。
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