D2Cの時代にECサイト構築が「ヘッドレス」であるべき理由:ヘッドレスコマース vs. 従来型コマース【前編】
顧客接点となるフロントシステムと、カートや顧客管理などバックエンドバックエンドのシステムを分離させる「ヘッドレスコマース」と呼ばれる考え方が一般的になりつつある。これを採用するメリットとは。
大企業のEC(Eコマース:電子商取引)サイト構築においては、顧客接点となるフロントシステムと、カートや顧客管理などバックエンドバックエンドのシステムを分離させる「ヘッドレスコマース」と呼ばれる考え方を採用する動きが活発化している。Webサイトやモバイルアプリケーション、各種SNS(ソーシャルネットワーキングサイト)など多岐にわたるUI(ユーザーインタフェース)をモジュールに分割して、各モジュールをマーケティング担当者が更新できるようにしているのだ。
中小企業でも、WordPress Foundationの「WordPress」などのシンプルなツールと組み合わせれば、ヘッドレスコマースを利用できる。かつてのヘッドレスコマースは、開発者が大企業から資金援助を受ける専門分野の一つだった。だが、今やそうではなくなった。新興ブランド企業がD2C(オンラインによる直販)モデルを取り入れ、他とは一線を画す独特のデジタル体験を生み出しているためだ。
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「ヘッドレス」は大企業にも中小企業にもメリット
ヘッドレスコマースシステムを提供する各社は、自社のAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)をバンドルして、大企業がヘッドレスコマースを設定する際の開発者のオーバーヘッドをある程度取り除いている。こうしたシステムには、Acquiaの「Acquia Digital Commerce」、Adobeの「Adobe Commerce(旧Magento Commerce)」、SAPの「Spartacus」、Salesforceの「Salesforce Commerce Cloud」などがある。
大規模小売事業者は、大幅に複雑化したシステムであっても、ヘッドレスコマースによって極めて高速に処理できる可能性がある。ECの線形的なプロセスをマイクロサービス(小規模なサービス)に分解できるためだ。特に、既存の製品ラインで同じ製品を微妙に変えて多数の製品を提供している場合は、これが当てはまる。
中小企業であっても、ECの取り扱い規模が大きくなればヘッドレスコマースが有利であり、それを実現可能な仕組みも整いつつある。Webで目立つ存在になろうとする新興企業も、BigCommerceの「BigCommerce」やShopifyの「Shopify」などの製品を使用してヘッドレスコマースを導入できる。こうした製品は、従来のテンプレート化されたECサイトを小さなブロックに分解し、そのブロックをモバイルアプリケーションなど他のチャネルで再利用可能にする。ページ全体やページグループの公開をやり直すことなく、マーケティング担当者が製品説明やプロモーション価格を素早く更新できるようになる。
シリアルのスタートアップ企業でも実現可能なヘッドレス
ヘッドレスコマース化する決断は一般的になりつつある。どのECサイトでも似たり寄ったりの製品画像、説明、価格、カートへの追加が使われているのが主な原因だ。「他にもさまざまな理由がある」と、開発者兼技術コンサルタントのケビン・グリーン氏は述べる。グリーン氏は料理本作家であり起業家のエミリー・エリス・ミラー氏が設立したブランド企業OffLimitsが提供するシリアル食品の販売サイトを、ヘッドレスコマースで構築した。
ミラー氏は、最先端のマスコットを特徴とする、同社の2つの代表的な製品「Dash」と「Zombie」用にひときわ目立つWebサイトを求めていた。そこでグリーン氏はShopifyを使ってヘッドレスコマースサイトを構築した。このWebサイトはゲーム化されていて、チケットによって報酬を獲得できるのが特徴だ。
グリーン氏からヘッドレスコマース化について相談を持ちかけられたとき、「話はすぐにまとまった」とミラー氏は述べる。OffLimitsのシリアルにとって重要なのは、年代物の男性マスコットがあふれる市場を揺さぶることだった。「OffLimitsはヘッドレスコマースによって、同社のシリアルキャラクターに命を吹き込むことに成功した」とグリーン氏は語る。
「当社は他社が提供していない何か変わったことをやりたかったのだとすぐに気付いた。テンプレートを分解していたら、最初から構築するよりも時間がかかっていただろう」(ミラー氏)
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