「5G」ユーザーを急増させた“あの用途” スマホ利用は今後どうなる?:世界に広がる大容量モバイル通信
「5G」の契約数とモバイルトラフィックが急速に増加している。新型コロナウイルス感染症は5Gの利用を抑制するよりも、むしろ増大に影響した。今後5G利用を加速させるものとは。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大のさなかで、「5G」(第5世代移動通信システム)の利用が急速に進んでいる。調査会社ABI Researchのレポート「Network Technology and Market Tracker」によれば、5Gの世界の契約数は2020年末に約2億6400万契約だった。これが2021年末には2倍になる。同レポートは5G利用が進む要因についても解説している。
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押さえておくべき「5G」の特徴も
ABI Researchのレポートによれば、2020年のモバイルトラフィック(携帯電話の通信量)は前年比で約60%増の591E(エクサ)Bを突破した。感染が拡大する間も、人とつながり続ける必要性がモバイルトラフィック増大の原動力になった。ただし同レポートによれば、こうした動きは5Gの序章にすぎない。
5G利用を爆増させる“あの用途” 通信量の増加が進む
2026年のモバイルトラフィックは、2020年の5倍以上に増大し、その半分以上を5Gが占める見込みだという。2026年の5Gの契約数は、2020年末の10倍の約26億契約に到達する見込みだ。
こうして5Gの利用が増える中で、一部の携帯電話事業者のARPU(ユーザー当たりの平均売上高)が改善した。これから特に5G導入が進むのは医療、自動車、運輸、製造といった業界だ。産業用途のアプリケーションが、今後数年の携帯電話事業者の売り上げを押し上げるとABI Researchは予測している。
地域別にみると、特に中国の存在が大きい。中国の現地事業者が5Gに大掛かりな投資をしていることもあり、世界全体における5G契約数の3分の2以上を中国が占めていることが分かった。国別の5Gの契約数は米国が2位、日本と韓国がそれに続いている。
携帯電話事業者は5Gによって売り上げを増大させるための戦略を急速に進めている。例えばVerizonは、既存契約者に5G端末への移行を促すキャンペーンを実施している。China Mobileは、5G利用を促す4K(4000×2000ピクセル前後の解像度)のライブストリーミングや、クラウドサービス型のオンラインゲームといったアプリケーションの提供を開始した。
ABI Researchのアナリストであるキーン・サンディ・リン氏によれば、これまでモバイルトラフィックの伸びをけん引してきたのは、動画コンテンツやデジタル決済、インターネット通販、Web会議などだ。これに加えて、5Gが大容量のデータプランの採用を加速させるとともに、動画ストリーミングやゲームといった大量のモバイルトラフィックを生み出すアプリケーションの利用を加速させているという。
携帯電話事業者にとっては、5Gのネットワークインフラへの投資に加えて、5G向けの新サービスを打ち出して収益を増やすことが重要だ。ABI Researchは携帯電話事業者によるネットワークインフラへの投資と、5G向けスマートフォンの急速な普及が組み合わさり、5Gの契約数は2021年末に5億700万に到達すると予測する。これは2020年末のほぼ倍に相当する。
リン氏は5Gの利用を促進する主な要因は、動画コンテンツの視聴だと話す。だがそれだけではない。教育や医療、ソーシャルネットワークサービス(SNS)向けのAR(拡張現実)やVR(仮想現実)を使ったサービスも、5Gの利用を後押しする。一方で携帯電話事業者は、5GへのROI(投資対効果)を最大化するチャンスを生み出すことが必要だと同氏は指摘する。例えばアプリケーションに応じてネットワークを分割する「ネットワークスライシング」を活用することで、安定した通信サービスを提供することが必要だという。
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