EdTechユニコーン企業CEOが感じる、教育業界にはびこる“ITへの拒絶感”とは:GoStudentが挑んだ「オンライン教育」市場の開拓【後編】
ユニコーン企業となったEdTechベンダーGoStudentのCEOは「教育業界にはIT活用を阻む障壁がある」と話す。障壁の正体とは何か。障壁が存在する理由とは。
前編「EdTech業界のユニコーン企業が語る コロナ禍がオンライン教育を難しくした理由」は、ユニコーン企業(未上場でも評価額が10億ドルを超える企業)となったEdTech(教育とITの融合)ベンダーGoStudentについて紹介した。後編は、同社の創業者で最高経営責任者(CEO)のフェリックス・オースバルト氏に、教育業界にある「IT活用を阻む障壁」について聞く。
教育機関のIT活用を阻む“あの障壁”とは
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オンライン教育を提供する講師と学習者のマッチングサービスを提供するGoStudent。同社が誕生した2016年ごろ、ITサービスを活用した教育方法は、「人々にとってそれほど魅力的なものではなかった」とオースバルト氏は振り返る。それでも、同社のオンライン教育サービスに対する利用者からの肯定的な評価が広まることで事業は急拡大した。
GoStudentは、必ずしも教育業界にあるIT活用の障壁を越えたわけではないとオースバルト氏は強調する。「教育業界には『現状を脅かすアイデアはばかげたものだ』という、何十年も変わらないおかしな考え方がある」(同氏)
IT活用を阻むこうした考えは他業界にも存在する。オースバルト氏が具体例として挙げるのは医療業界だ。先駆的な医療機関やITベンダーが生み出すIT活用アイデアは、既存の制度や医療機関を否定するものではないと同氏は指摘する。「『従来のやり方だけでは、多くの人に最適なケアを提供することはできない」といった考えから生まれたアイデアだ」と同氏は語る。
教育業界におけるIT活用アイデアも同様だ。オースベルト氏は、GoStudentのオンライン教育サービスについて「従来の教育方法に取って代わろうとしているわけではなく、従来の教育方法を補完して新たな価値を加えようとしている」と話す。
願いは「IT教育業界のIT活用への理解」と「必要な人へサービスが届くこと」
GoStudentのオンライン教育サービスがマネタイズ(収益化)できるかどうかについては、投資家も当初は懐疑的だった。だが同社は「市場は大きい」と考えていた。Web会議やオンラインコミュニケーションが一般的になりつつある中で、オンライン教育であれば、家から出なくても仕事ができると気付く講師もいた。こうした状況の中で、オースベルト氏はマネタイズが可能だと確信したという。
実際、GoStudentは利益を上げている。2億500万ユーロの資金調達を成し遂げ、評価額14億ユーロ(約15億8800万ドル)のユニコーン企業(評価額が10億ドルを超える非上場企業)という地位を築いた。同社がニッチなオンライン教育分野にいち早く乗り出したことは報われつつある。オースバルト氏は「この成功をなんとしても国際的な成長につなげたい」と語る。
オースバルト氏がオンライン教育サービスを始めたきっかけは、同氏が兄弟と学校教育の限界について話し合ったことだった。学習者によっては、授業のペースに付いていけないことがある。学習の遅れを学校外でフォローしてもらえるサービスがあればよいと考える学習者もいる。
そうした課題の解決方法としてオースバルト氏が考えたのは、チャットツール「WhatsApp」を使って学習者と講師をつなぐアイデアだ。同氏は「基本的だが、とても有益なアイデアだと思った」と話す。
オースバルト氏の願いは、いつか教育業界がITの利点を理解し、支援を必要とする学習者に教育機関がEdTechサービスを紹介する時代が来ることだ。同氏は、このパンデミックの時代を乗り越えていく中で教育におけるITの役割が今以上に認識されることを期待している。
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