ランサムウェア被害を脱した企業が「クラウドファイルストレージ」を使う理由:ランサムウェアから早期復旧【後編】
ランサムウェア攻撃を受けたLEO A DALYがデータを迅速に復旧させるために、クラウドファイルストレージの機能が役立った。同社はなぜクラウドファイルストレージを使うことにしたのか。
国際的な建築設計事務所であるLEO A. DALY(LEO A DALYの名称で事業展開)は、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)攻撃を受けたものの無事にデータを復元できた。前編「『ランサムウェア』に狙われた企業が“数時間”で復旧できた理由」で紹介した通り、データの復元にはクラウドファイルストレージの機能を使った。同社はランサムウェア被害の抑止だけではなく、さまざまな利点をクラウドファイルストレージから引き出している。
クラウドファイルストレージでLEO A DALYの何が変わったのか?
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LEO A DALYはクラウドファイルストレージの「Nasuni」を使用している。同社はNasuniのバックアップや復元機能を使うことで、ランサムウェアで暗号化されたデータを迅速に復元できた。ただし、そもそも同社がNasuniを導入したのは別の理由からだった。
Nasuniを使うことで、LEO A DALYはオンプレミスのデータセンターのスペースを圧縮できた。データセンターに2TBの容量を持つキャッシュサーバを1台設置し、ファイルの大半はクラウドサービス「Microsoft Azure」に保存している。NasuniのクラウドファイルストレージはMicrosoft Azureで構築されている。この仕組みを導入する前、同社は各拠点に設置したサーバおよびバックアップ用のストレージでデータを保管していた。
「当社のやり方はさまざまなリスクを軽減できる」と、LEO A DALYのバイスプレジデント兼CIO(最高情報責任者)のステファン・ヘルド氏は説明する。例えば悪天候によって自社の拠点やネットワークが使用できなくなれば、データも同時に利用できなくなる可能性がある。クラウドサービスでデータを保管しておけばそのリスクを軽減できる。
建設設計事務所であるLEO A DALYは、CAD(コンピュータ支援設計)の膨大なデータを抱える。5年のうちに2回のストレージ増強をしなければならない状況も過去にあったという。そうして急速にデータ増大が進行していたため、「ストレージ増強を繰り返す“いたちごっこ”から抜け出す方法を模索していた」とヘルド氏は言う。
クラウドファイルストレージを選定するに当たり、LEO A DALYが重視したのはデータアクセスの要件だった。具体的には、オンプレミスのキャッシュサーバとクラウドサービスのインフラを併用する点だ。自社のネットワークにあるキャッシュサーバや他のサーバ群がオフラインになっても、クラウドサービスにあるデータは利用できる。「1つの問題に起因して全てのサーバにアクセス不能になる仕組みでは役に立たない」と同氏は話す。Nasuniはその要件を満たしていた。
今後に向けて、ヘルド氏はどこからでもオフィス業務ができる体制を整えたいと考えている。LEO A DALYはスペックの高いハードウェアを必要とするアプリケーションも使っており、その利用のために専用のハードウェアを用意する必要のない仕組みが理想的だという。「立地に左右されずに必要なハードウェアのリソースを自由に使える状態が望ましい」と同氏は言う。
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