大学が「屋外無線LAN」ではなく「プライベート5G」を選んだ納得の理由:CSU Stanislausは「プライベート5G」をどう活用したか【前編】
キャンパスの屋外におけるネットワーク利用ニーズに応えるため、CSU Stanislausは屋外に無線LANアクセスポイントを設置するのではなく、「プライベートLTE」および「プライベート5G」を構築した。その理由とは。
California State University, Stanislaus(CSU Stanislaus:カリフォルニア州立大学スタニスロース校)は、「LTE」(Long Term Evolution)および「5G」(第5世代移動通信システム)のプライベートネットワークである「プライベートLTE」「プライベート5G」をキャンパス全体に整備した。CSU Stanislausの事例は、組織が5G導入を考える際の一助となる可能性がある。
プライベートLTEおよびプライベート5Gでは、通信事業者が提供するLTEおよび5Gのパブリックネットワークを、組織が部分的に専有して利用する。CSU Stanislausは、プライベートLTE/5Gを実現するために「CBRS」(市民ブロードバンド無線サービス:Citizens Broadband Radio Services)を利用した。CBRSは、組織のプライベートネットワークへの活用を目的に、米国政府が民間に開放した3.5GHzの周波数帯だ。
CSU StanislausのIT管理者は、キャンパスの屋外で無線ネットワークを利用したいという教職員や学生のニーズを満たすために、新たなネットワーク構築手段を模索していた。CBRSを活用したプライベートLTE/5Gの可能性に、同校のIT管理者は期待を抱いた。
だから「屋外無線LAN」を選ばなかった
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「5G」と無線LANを比較
CSU Stanislausで最高情報責任者(CIO)代理を務めるジェフ・チルロ氏は、キャンパスにおける教育に関する課題を解決するための、適切な無線ネットワークアーキテクチャの策定を任された。チルロ氏によると、当時CSU Stanislausは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の影響で、教職員や学生がさまざまな屋外スペースから学内システムやインターネットにアクセスできるようにする必要があった。
米国カリフォルニア州のターロックにあるCSU Stanislausのキャンパスの敷地面積は、約92万平方メートルに及ぶ。無線LANアクセスポイント(AP)を追加して新しいファイバー光ケーブルを地下に敷設する方法だと費用が高く、無線LANの構築に時間がかかるという課題があった。教職員や学生が、キャンパスのどの場所をオンライン教育の場所として選ぶかが分からず、APの適切な配置方法を事前に検討することも難しかった。そのためチルロ氏が率いるIT部門は、こうした課題に対処可能なプライベート5Gの導入に魅力を感じていた。
CSU StanislausのIT管理者は、ネットワークベンダーのCelonaに、企業向けのプライベートLTE/5G構築支援製品について問い合わせた。CSU StanislausのIT管理者と話したCelonaの担当者は、キャンパス内にある建物の屋上に幾つかのLTE(Long Term Evolution)の基地局を設置すれば、キャンパス全体で無線ネットワークを利用できるようになると判断した。
基地局を設置した後、CSU StanislausのIT管理者は、キャンパス内にLTEから無線LANへのゲートウェイを設置して両者を接続した。ゲートウェイを設置することで、ファイバー光ケーブルを地下に敷設して運用する必要がなくなった。キャンパス全体をカバーするバックホール(通信網を中継するネットワーク)としてプライベートLTE/5Gを使用することで、同校のIT管理者は、「eduroam」のネットワークをキャンパス敷地内のどこへでも容易に拡張できるようになった。 eduroamは、教育機関や研究機関の間でキャンパスの無線LANを相互利用できるようにするローミングサービスだ。
後編は、プライベートLTE/5Gを導入した結果、CSU Stanislausが得たメリットと今後の展望を紹介する。
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