.NET Frameworkから.NET Coreに移る前に知りたい「.NET 6」の特徴と注意点:「.NET Framework」からの脱却は実現するか【後編】
Microsoftの「.NET Framework」の後を継ぐ「.NET Core」は、開発者が.NET Frameworkから脱却するに足るものなのか。その判断材料となり得る、.NET Coreのバージョン「.NET 6」を解説する。
「.NET Core」は、Microsoftが「.NET Framework」の後継として開発したアプリケーション開発・実行環境だ。同社が2021年に公開した.NET Coreの新バージョン「.NET 6」は、「Android」「iOS」「macOS」で稼働するアプリケーションを開発できる他、ランタイム(実行時間)を短縮できることなどを特徴とする。
知っておきたい「.NET 6」の“これだけの特徴”
併せて読みたいお薦め記事
連載:「.NET Framework」からの脱却は実現するか
レガシーシステムからの脱却
- 「COBOL」プログラムが古くなっても動き続ける“切実な理由”
- 古いハードウェアを使い続けるリスクと、それでも使い続ける際の注意点
- レガシーなはずの「メインフレーム」がいまだに使われ続ける“納得の理由”
.NET 6の主な特徴を以下に挙げる。
- Android、iOS、macOS用のアプリケーションを単一のソースコードで記述可能
- 標準で「Armv8」をアーキテクチャとして採用したマイクロプロセッサで稼働可能
- プロセッサの使用量を減らしたり、実行時間を短くしたりする最適化を、JIT(Just-in-Time)コンパイラが自動で実行できるようにする「Profile Guided Optimization」(PGO)
- JITコンパイラはプログラムの実行時に、プログラミング言語で記述されたソースコードを機械語に変換することで、さまざまなOSでアプリケーションを実行できるようにする。
- プログラミング言語「WebAssembly」、アプリケーション観測ツール「.NET Monitor」「OpenTelemetry」などのツールとの連携
- 通信プロトコル「HTTP/3」を利用した通信、「JSON」形式のデータの読み書き、メモリの直接操作といった操作が可能なAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)
取り残された.NET Frameworkユーザーを救えるか
.NET 6の新機能は、
- アプリケーションを機能などの細かい単位で切り分けた「マイクロサービスアーキテクチャ」
- WANを仮想化して一元管理しやすくする「ソフトウェア定義ネットワーク」(SD-WAN)
- モノのインターネット(IoT)
- 5G(第5世代移動通信システム)
など、高性能プロセッサや多くのデータを扱うアプリケーションを使用する開発者が増えることを想定したものだ。アップデートの中で、名前から「Core」という文字列が取り除かれた。この事実は、.NET Frameworkコミュニティーと.NET Coreコミュニティーを統一したいというMicrosoftの意欲を示しているように見える。
Microsoftは.NET 6を通じて、レガシーなアプリケーション開発・実行環境への依存の排除を推し進めている。具体的にはクラウドアプリケーション開発、デスクトップアプリケーション開発、モバイルアプリケーション開発に適したツールや機能を、過去のバージョンよりも強化した。それら全てのアプリケーション開発において、同社が従来のサポートを提供することも明確に示している。
.NET 6を焦って導入することは避けたい行為だ。企業の開発チームは.NET 6の長所と短所を見極めて、導入あるいは移行する価値があるかどうかを慎重に検討する必要がある。.NET Frameworkユーザー企業であれば、レガシーアプリケーションのベンダーサポートと、アプリケーションに組み込み済みのレガシーコンポーネント(部品)の対処について考慮しなければならない。.NET Frameworkユーザー企業が.NET Coreへの移行を避けてきたのはその問題があるからだ。移行の支援策が.NET 6にあるかどうかも検討する必要がある。.NET Coreユーザー企業は.NET Frameworkユーザー企業ほど旧バージョンとの互換性の問題にぶつかる可能性は高くないが、問題が起きる可能性は心に留めておくべきだ。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.