健全な企業になるには「コンプライアンス違反通報のしやすさ」が重要な理由:コンプライアンス違反の通報と職場の変化【後編】
コンプライアンス違反の通報が多いことは、従業員にとっての働きやすさを示している可能性があると専門家は語る。従業員にとって「声を上げやすい仕組み」とは。米国における社会的潮流の変化と企業の動向を探る。
前編「コンプライアンス違反の通報が多い企業ほど働きやすい“なるほどの理由”」に続く後編は、米国で内部告発の増加を促した可能性のある社会的潮流の変化について考察し、従業員がコンプライアンス違反に対して声を上げやすくなる仕組みを探る。
通報へのハードルを下げる「社会的潮流」の変化
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社会的潮流の変化は、内部告発の量に影響を及ぼす。例えば2020年の米国で、人種差別への社会的な抗議活動が起きた時期に、差別に関連する通報が大幅に増えたという。匿名告発ツールと苦情管理コンサルティングサービスを提供するEthics Suiteの共同創業者兼プレジデントのジュリエット・ガスト氏は当時を振り返り「人々がソーシャルメディアに投稿していた反労働感情も、通報を促している可能性がある」と指摘する。
「一部の業界や企業で通報が増えている傾向がある」とガスト氏は見る。こうした状況の背景には、以下のような企業の取り組みや社会的な感覚の変化がある。
- 企業が従業員のために、通報手段を複数用意している
- 企業や社会が、苦情を受け入れる体制を強めている
- ソーシャルメディアを筆頭に、企業のコントロールが及ばない場所で苦情を訴える手段が複数登場している
- 社会が「声を上げる」文化を奨励している
従業員の通報に対する「圧力」や「壁」になるような要素もある、とガスト氏は指摘する。具体的には以下のようなケースだ。
- テレワークによって通報が減少している
- 報復をされる恐れから、従業員が通報をためらっている
- 「どんな状況で通報すべきか」についての社内教育が不足している
- 例えば従業員が「上司の不正を告発する責任が従業員にあるのだろうか」という疑問を持っている。
- 過去に発生した通報および対処の方法が原因で、従業員が企業を信用していない
George Washington University School of Business(ジョージ・ワシントン大学経営大学院)で会計学のアシスタントプロフェッサーを務めるカイル・ウェルチ氏は、「内部告発が増えているのは問題が増えたからだと考える人もいる。だがそうした考え方には穴がある」と話す。
人々は以前よりも声を上げやすくなった、とウェルチ氏は感じている。同氏は、性被害を訴える「#MeToo」運動が従業員による通報を促したと考察する。
「#MeToo運動が起こったのは、不適切な人間が増えたからだろうか。おそらくそうではない。自分たちが直面している問題について、進んで声を上げる人が増えたからだ」(ウェルチ氏)
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