「HDDはなくなる」は本当か? IDCの答えは:専門家が語る「HDDの運命」【第6回】
特定分野でSSDへの移行が進んでいるものの、HDDがすぐになくなることはない。生き残るための条件も含め、ストレージ業界の専門家がHDDの運命を占う。
消滅説が伝えられて久しいHDD。だが、HDDは2022年現在も企業のストレージを支えている。なくなるのは時間の問題なのか。生き残るための条件とは何か。1つのメモリセルに4bitの情報を保存する「QLC」(クアッドレベルセル)のSSDによる脅威を取り上げた第5回「『SSDよりも安い』というHDDの強みは『QLC』でなくなる?」に続き、第6回となる本稿は「HDDはなくなるのか」の答えを探る。
HDD業界は右肩下がりじゃない?
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「HDD」を巡る最近の動き
企業向けHDD事業は大幅成長
ストレージベンダーWestern Digitalのバイスプレジデント(HDD事業部門担当)兼ゼネラルマネジャー、アシュレイ・ゴラクポワラ氏 HDDが企業の市場から消え去ることは決してない。データの爆発的な増加によって、データセンターには複数の層を備えたストレージを構築することが必要になっている。その最も重要な層はHDDになる。
HDDは今後どうなるのかを考えるとき、2つの見解がある。消費者市場においては、HDD業界は衰退するか消滅するかだ。一方で、企業向けの市場ではストレージの容量に対するニーズが活発だということが分かる。顧客の声を基にすると、HDD事業は今後5年間で毎年35%の成長を見込んでいる。
HDDが企業向け市場から消えることはない
コンサルティング会社Dragon Slayer Consultingのプレジデント、マーク・ステイマー氏 HDDはSSDと比べまだ安価だ。特にクラウドベンダーや大規模システムを運用する企業は低コストを重視している。SSDの中では最も容量単価が安価なQLC(クアッドレベルセル)のSSDでさえ、1GBや1TB当たりのコストはHDDと比べたら、5〜10倍ほど高くなる。重複排除や圧縮を使えばよいという意見もあるが、それが有効なのはHDDでも同じだ。
企業はHDDの関連技術を熟知している。複数のHDDを組み合わせて1台のHDDのようにして運用する「RAID」(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)によって、データ損失のリスクを減らせることを企業は知っている。HDDが近いうちに消え去るとは考えにくい。SSDと比べてコスト面の優位性を維持できる限り、HDDは生き残ると捉えている。
SSDの容量単価がHDDと同程度にはならない
調査会社IDCのリサーチディレクター(HDDおよびストレージテクノロジー部門)、エドワード・バーンズ氏 SSDの開発や販売をビジネスとする企業は「近いうちにSSDとHDDが同価格帯になり、HDDは姿を消す」ということをほのめかしている。しかし、こうした論調は10年以上前からある。では、HDDはなくなったかといえば、そうではない。ただし、PCや家庭用電化製品といった特定分野ではSSDへの移行が進んでおり、それは今後も続くとみている。
HDD市場の売上高は今後も増加する見通しだ。当面、SSDの1GB当たりの価格がHDDと同等近くまで下がることはないと捉えている。
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