BMWの「データ管理」術とは? EVの走行データで新車投入をスピードアップ:分散するデータを価値に変える
BMWグループは全世界の拠点において一貫性のあるデータ管理を目指す。その一環で、同社はデータ管理とデータ分析の新たな仕組みを導入した。その具体的な内容とは。
自動車メーカーBayerische Motoren Werke(BMW)は、全世界の拠点とクラウドインフラのデータ管理を統一する戦略を推進する。その一環で、同社はHewlett Packard Enterprise(HPE)のプライベートクラウドサービス群「HPE GreenLake Edge-to-Cloud」(HPE GreenLake)を導入した。
HPEはビッグデータ分析、バックアップとリカバリー(復旧)、コンプライアンスに準拠したアーカイブなどのサービスを、HPE GreenLakeで一元的に提供する。BMWグループが目指すのは、全世界で一貫性のあるデータ管理を実現することだ。どのような仕組みを使い、何を狙っているのか。
全世界のデータを集約――BMWの“データ管理術”とは?
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BMWグループはHPEの協力を得て、試験用の電気自動車(EV)からバッテリーの温度、消費電力、車両速度などのデータを収集して分析し、新車の市場投入までの時間を短縮する計画を進めている。データの抽出や分析には、データレイクハウス(データウェアハウスとデータレイクの利点を組み合わせたデータ基盤)と分析機能を備えるサービス「HPE Ezmeral Unified Analytics」(HPE Ezmeral)を用いる。
HPE Ezmeralを使うことで、BMWグループのデータサイエンティストやエンジニアは、拠点を問わずデータを活用できるようになる。HPEによれば、同サービスは分析やシミュレーションに必要なデータ運用プロセスや分析ツールを提供する。
世界各地に分散するマイクロデータセンター(モジュール式小型データセンターシステム)が運用のベースになる。マイクロデータセンターには「HPE Apollo」や「HPE ProLiant」といったHPE製サーバを使用する。これらのサーバとVDI(仮想デスクトップインフラ)を組み合わせることで、データサイエンティストやエンジニアが場所を問わずデータを管理したり分析したりできるようになる仕組みだ。
HPEのCEO兼プレジデントを努めるアントニオ・ネリ氏は、自動車業界ではデータが競争優位性をもたらす重要な要素になると語る。一方で、データの分散、データ量の増加や多様化、データ活用に求められる迅速さなどにより、データ管理の複雑さは増す一方だという。HPEはさまざまな場所でデータを管理するクラウドインフラを軸にした手法により、BMWグループがデータ管理の課題を克服できるように支援する。「この体験がデータの価値を解放するための強力な基盤となることを楽しみにしている」(ネリ氏)
BMWグループは、HPEがHPE GreenLakeの大規模な機能拡張を発表してから獲得した顧客企業の一社だ。機能拡張には、HPEの人工知能(AI)技術を活用したクラウド型ネットワーク管理ツール「Aruba Central」との統合が含まれる。他にも、
- シングルサインオン
- セキュリティ
- コンプライアンス
- データ保護
などの機能拡張があった。
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