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「農村部ブロードバンド化」への巨額投資に隠れた英国の“2つの思惑”全国ブロードバンド化を進める英国の構想【後編】

英国政府は、通信インフラが整備されていない農村部においてブロードバンド化を促進するため、さまざまなプロジェクトに取り組んでいる。同国政府の狙いとは。

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 英国の農村部ではいまだに銅線という旧式の通信インフラを使い、ブロードバンド(広帯域幅のデータ伝送)による高速通信を利用できない地域がある。英国政府はこの問題を解決するため、50億ポンド(約8085億円)を出資するプロジェクト「Project Gigabit」を2021年4月に開始した。このプロジェクトは「全国民に高速で信頼性の高いブロードバンドを提供すること」をミッションに掲げる。ただし英国が本当に狙うのは、単に通信インフラを刷新することではない。

「農村部ブロードバンド化」に隠れた真の狙いとは?

 Project Gigabitで優先地域になるのは、ブロードバンドを提供する通信事業者の事業展開では対象外となるような地域だ。通信インフラが十分に整備されていない地域の、100万戸以上の住宅や企業がギガビット級ブロードバンドを利用できるようにする。

 プロジェクトは単にギガビット級ブロードバンドを対象地域に提供するだけではない。2つの狙いがある。1つ目は、新しい通信インフラを材料として地域への投資を呼び込むことだ。ブロードバンドという「ハブ」があれば、民間企業が周囲の住宅や企業へさまざまなサービスを提供可能になる。

 2つ目の狙いは、二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにする「ネットゼロ」の達成への貢献だ。ギガビット級ブロードバンドがあれば、エネルギー効率の悪い、現地で稼働するサーバの利用を停止し、よりエネルギー効率の高いクラウドサービスを利用可能になる。

 教育分野では、英国中西部のエルズミアポートにある学校Acorns and Whitley Village Federated Schoolが、既にProject Gigabitを通してギガビット級ブロードバンドに接続している。同校は教育省による通信インフラ刷新の試験的プロジェクト「Connect the Classroom」の一環で新たに提供された無線LAN機器も活用し、最新技術を採用した授業に移行している。

 Acorns and Whitley Village Federated Schoolの責任者ラッセル・デビッド氏は、信頼できる高速インターネット接続は現代の教育に欠かせないとみる。「へき地に位置することは、もはや制約ではない」(同氏)

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