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「DPU」がLinuxの標準プロセッサになる? “ニッチな頭脳”から脱却へ新プロセッサへのLinux流アプローチ【後編】

CPUの脇役的な存在として扱われることもあった「DPU」(データ処理装置)。Linux Foundationは、そのDPUを一般的なプロセッサへと育て上げるための構想を発表した。これからどう変わるのか。

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 企業にとっての新たなプロセッサ「DPU」(データ処理装置)に関して、業界団体のLinux Foundationが普及を推進するためのプロジェクトを立ち上げた。これまでにDPUへの注目度は高まりつつあったが、その活用範囲は限定的だった。Linux Foundationの取り組みを通じて、DPUはどう変わるのか。

もう“ニッチ”ではない「DPU」 Linuxの標準プロセッサに?

 Linux Foundationが立ち上げたプロジェクト「Open Programmable Infrastructure」(OPI)には、半導体やハードウェア、ソフトウェアの著名ベンダーが参加している。調査会社IDCのアナリストであるブランドン・ホフ氏は、「DPUの標準化を進める」というOPIの狙いに大きな意義があるとみる。「DPUは標準化が進むことでさまざまなデータセンターで利用可能になり、ニッチ市場から一般市場へと一気に広がる可能性がある」とホフ氏は強調する。

 DPUの活用が広がるまでには多少の時間が必要だとホフ氏は予測する。標準化された設計が市場に浸透するまでに3〜5年、企業向けのハードウェア製品にDPUが標準搭載されるまでには5〜10年はかかる可能性があるという。

 OPIには既に具体化したプロジェクトもある。その一つが、Linux Foundationが開発した、開発ツール群「IPDK」(Infrastructure Programmer Development Kit)を含むものだ。IPDKは、ネットワーク関連のタスクをCPU(中央処理装置)からオフロードする際に必要になる、ドライバやAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を含むフレームワーク(特定の機能を実装するためのプログラムの型)となっている。OPIはIPDKを利用して、DPU用のソフトウェア設計の開発を進める。

 半導体ベンダーのNVIDIAは、同社のDPU製品向けの開発キット「DOCA」をOPIに提供する。DOCAはライブラリ(汎用<はんよう>的に使えるプログラムの集合体)やドライバ、ドキュメント、管理ツール、サンプルアプリケーションなどを含む。

 OPIの狙いをまとめると、以下3点に集約できる。

  • DPUの標準的な定義に合意すること
  • DPUで動作するオープンソースソフトウェア(OSS)の市場を形成すること
  • DPU関連の技術を「Linux」に組み込むこと

 Linux Foundationは、同団体が開発する既存のプロジェクトをOPIと同時に進め、DPUのためのOSSの市場形成を促進する。既存のプロジェクトとしては例えば以下がある。

  • DPDK(Data Plane Development Kit):ネットワークインタフェースカード(NIC)用のライブラリとドライバを提供する開発キット
  • Open vSwitch(Open Virtual Switch、通称「OVS」):ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)のための仮想スイッチ

 最終的にLinux Foundationが目指すのは、企業がDPUを活用することでデータセンターの運営をより効率化できるようにすることだ。機械学習をはじめ、大量のデータを必要とする用途を企業は必要としている。大量のトラフィック(ネットワークを流れるデータ)を低レイテンシ(遅延)で処理するために、DPUの役割はこれから一段と重要になると考えられる。

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