サプライチェーンを危険にする「NGなセキュリティ対策」 ドイツの事例で解説:サイバー攻撃事例に学ぶ【後編】
サプライヤーを起因としたサイバー攻撃が広がる傾向にある。企業はどのような対策を取るべきなのか。ドイツの石油貯蔵会社Oiltankingが受けたサイバー攻撃の事例を基に解説する。
2022年1月、ドイツの石油貯蔵会社Oiltankingがサイバー攻撃を受けた。これにより同国内のタンクファーム(最終消費者または小売店へ引き渡す前の石油製品を保管する施設)13カ所で、石油製品の供給が停止した。本稿はこの事例を基に、企業が取るべきセキュリティ対策について解説する。
企業が取るべき対策、NGな対策は?
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セキュリティベンダーHuntsman Securityで製品マネジメントを統括するピアース・ウィルソン氏は次のように話す。「英国で2021年に発生した燃料不足問題が浮き彫りにしたように、燃料サプライチェーンは潜在的な脆弱(ぜいじゃく)性を抱える」。燃料を取り扱う業界へのサイバー攻撃は、消費者や企業に混乱を引き起こす可能性がある。次の被害を出さないよう企業は対策を取ることが重要だ。
企業は最新のセキュリティ技術を導入するだけでなく、社内に存在するセキュリティリスクを定期的に査定しなければならない。例えば以下のような場合には、マルウェア対策ソフトウェアを最新版にアップデートしても、攻撃による被害が発生する可能性があるので注意が必要だ。
- 各種ソフトウェアに対して定期的にパッチ(修正プログラム)を適用していない
- 管理者アカウントが適切に管理されていない
- ベンダーによる保守サポート切れのソフトウェアを利用している
企業は従業員がフィッシングメールを受け取った際、どのような点に警戒すべきかを教育しておくことも欠かせない。サプライチェーンの対策も取る必要がある。自社内でサイバー攻撃への対策を講じたとしても、サプライヤーが同様の対策を講じなければ、部分的な解決策にしかならない。サプライヤーに起因するサイバー攻撃は広がる傾向にある。「自社にまで攻撃が及ばないとしても、サプライヤーの事業停止による影響は生じる」とウィルソン氏は話す。
パートナー企業やサプライヤーに対しても、サイバーセキュリティに関する取り組みの定期的な監査が不可欠だとウィルソン氏は指摘する。Oiltankingへの攻撃によるドイツ国内への影響は限定的だった。ただし同氏は「Oiltankingへの攻撃は、自社およびパートナー企業のサイバーセキュリティに確信が持てない組織に向けた、警鐘と捉えなければならない」と話す。
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