「安さが魅力のテープ」が値上げする“納得するしかない事情”:テープの出荷拡大の“なぜ”【前編】
値上げの動きはLTOテープにも波及している。富士フイルムは、2022年10月に一部の製品で値上げを実施する。背景にある動向や値上げの具体的な状況を追う。
値上げラッシュの波がテープにも押し寄せている。テープ規格LTO(リニアテープオープン)準拠製品のベンダーの一社である富士フイルムは、2022年10月1日にテープカートリッジの一部の出荷価格を5〜10%引き上げる。
今回の値上げの背景にある問題はテープに限った話ではないものの、「安価なストレージ」として認知されているテープに与える影響に関する懸念は残る。調査会社Evaluator Groupのシニアストラテジスト兼アナリストのランディ・カーンズ氏は「今の状況では値上げは避けられない」と言う。
LTOテープがなぜ値上げ? 回避できない事情とは
富士フイルム製のテープカートリッジで値上げの対象になるのは、「LTO-6」「LTO-7」「LTO-8」準拠の製品。同社が2021年9月に発売した「LTO-9」準拠の製品は、価格改定の対象から外れている。値上げの理由は原材料コストと輸送コストの上昇だ。
主要テープベンダーの一社であるソニーは、LTOテープの販売価格について具体的な言及を控えた。ソニーの広報担当者は「ベンダーが製品について詳細を公表しないのは一般的だ」とコメントした。
カーンズ氏は富士フイルムのLTOテープの値上げ幅を「かなり適正だ」とみる。他分野の製品の価格上昇率と同程度であることが理由だ。「どのベンダーも輸送をはじめとしたコストの上昇分を負担しており、それが価格に転嫁され始めている」と同氏は説明する。
LTOテープが値上げになる主な要因は、燃料と電力のコストだ。「エネルギー分野のインフレが原材料や輸送のコストに間違いなく影響している」と、富士フイルムの米国子会社FUJIFILM Recording Media U.S.A.のリッチ・ガドムスキー氏は話す。テープは石油に由来する原材料を使用しているため、エネルギー分野の価格動向の影響を受けやすい。
値上げの詳細
FUJIFILM Recording Media U.S.A.によると、インターネットで販売されるLTO-8の2022年6月の平均価格は、1カートリッジ当たり62.48ドルだった。この価格と比較すると、値上げ後は約3ドルの上昇になる。LTO-8は1カートリッジ当たり圧縮時30TB、非圧縮時12TBの容量を提供する。
同様にFUJIFILM Recording Media U.S.A.によると、インターネットで販売されるLTO-7の2022年6月の平均価格は、1カートリッジ当たり43.81ドルだった。値上げ後は2.19ドルの値上げになる。LTO-7は1カートリッジ当たり圧縮時15TB、非圧縮時6TBの容量を提供する。
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