RTOでもRPOでもない「WRT」とは何か? 復旧の順序は?:復旧ではまりがちな落とし穴【前編】
システムが停止する有事の際に「RTO」や「RPO」を考慮するのは基本中の基本だ。もう一歩先に進むには「WRT」を考える必要がある。WRTを短縮するにはどうすればいいのか。
システム障害や災害などの緊急事態においては、できるだけ早くシステムを正常な状態に戻すことが求められる。この際、意識すべき幾つかの指標がある。その中でも重要なのが「WRT」(Work Recovery Time:業務復旧時間)だ。本稿はWRTとは何か、WRTを短縮するにはどうすればいいのかを考える。
「WRT」とは何か? まず復旧させるべき対象は?
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復旧に利用するデータの古さを示す「目標復旧時点」(RPO)と、システムの復旧に要する時間を示す「目標復旧時間」(RTO)は、災害復旧(DR)における指標として広く認知されている。WRTはそれに比べて広く知られてはいないが、重要な指標だ。
WRTは、業務遂行に必要不可欠なデータとシステムが復旧した後の段階に焦点を当てる。必要不可欠なシステムが立ち上がるだけではなく、業務全体が通常通りの状態に戻るまでに要する時間が対象になる。WRTが長くなると財政面での重大な損失を生む可能性がある。
業種や組織によって、許容できるWRTの長さは異なる。どのような組織であっても、ビジネスへの負の影響をできるだけ小さくするには、WRTを短縮する必要がある。特に金融機関や医療機関は、WRTの短縮を重視しなければならない。
WRTを短縮する方法
WRTを短縮する方法は幾つかある。有効なのは、システムや業務の重要度をランク付けし、優先度の高いものから集中的に復旧させることだ。
影響範囲が社内に限定されるシステムの優先順位は低くしても問題ない。例えば勤怠管理システムであれば、時間を紙に記録しておき、数日後に勤怠管理システムが復旧してから入力しても大きな問題にならないからだ。
時間の記録が請求書発行や収益に関わる業務であれば、優先度は高く設定するとよい。さまざまなシステムが利用する通信の復旧も、総じて優先度が高くなる。各業務の重要度を見極めると同時に、その業務に関連するシステムの優先度を設定するようにしよう。
WRTを短縮するには、停電やシステム障害の影響を軽減するための対策を講じておく必要がある。それをスタートラインにすることで、業務が円滑に元通りになるまでの実効性のあるシナリオを作成できる。
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