ラズパイにもScratchにも無関心だった女子生徒が“コーディング好き”になった訳:コンピュータサイエンスを学ぶ女子生徒の憂鬱【第1回】
大学進学に向けて「コンピュータサイエンス」の科目を学ぶ、ある女子生徒は、小学生の頃はコンピュータサイエンスの授業が嫌いだったという。そんな彼女の考え方が変わったきっかけとは。
英国の大学入学資格「General Certificate of Education Advanced Level」(GCE A Level)の試験科目に「コンピュータサイエンス」を選択した、ある女子生徒がいる。ベラ・グリムジーさんだ。GCE A Level取得に向けた準備教育課程2年目のグリムジーさんは、コンピュータサイエンスのクラスでただ1人の女子生徒。彼女からの寄稿である本連載は、グリムジーさんが、唯一の女子生徒として感じた難点、プレシャー、さらには彼女が考えた「ITに女子生徒を引き寄せるための改善策」を紹介する。
ラズパイもScratchも「何が楽しいのか分からない」
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私はコンピュータに興味がなかった。7歳のとき、クリスマスに小型のシングルボードコンピュータ(SBC:最低限の要素から成るコンピュータ)「Raspberry Pi」(ラズパイ)をもらったが、何年もほったらかしだった。
プライマリースクール(小学校に相当)のコーディングクラブは、ビスケットをもらえても入る気になれなかった。セカンダリースクール(中学校に相当)に進むまでは、コンピュータサイエンスの魅力に少しも気付かなかった。
セカンダリースクールに入ってからも、授業はつまらなかった。ブロックを使ったプログラミングをするビジュアルプログラミングツール「Scratch」を渡されても、何が面白いのか分からなかった。
意味のなさそうなタスクを教員が設定するのを待ちながら、1時間も黙って座ったまま画面を見つめていなければならないコンピュータサイエンスの授業は嫌いだった。他の生徒は楽しそうだったが、私には退屈だった。
コンピュータサイエンスの新しい教員が来たおかげで、もうScratchをやらずに済んだのはうれしかった。だから義務教育後の卒業認定資格「GCSE」(General Certificate of Secondary Education)の試験科目を選ぶとき、もう一度コンピュータサイエンスを検討した。ITを学べば自分の将来の進路がはっきりするし、コーディングを学ぶのは楽しそうで有益なスキルになると思った。
そうは言っても、不得手な科目を選ぶのは不安だった。そこでコンピュータサイエンスを独学してGCSE取得を目指すことにした。独学ならいつでも止めることができるからだ。教科書と、動画共有サイト「YouTube」にある大量の動画を教材に挑戦を始めた。
コンピュータサイエンスの勉強はとても面白く、GCSE取得に必要な知識よりも深く学びを掘り下げた。プログラミング言語「Python」を使って楽しいプログラムを作った。
GCSE取得にコーディングスキルが必要ないのは不満だった。試験には疑似コードが使われるため、実在するプログラミング言語の知識は必要なかったのだ。GCSE試験に必要なのは暗記力だった。
GCE A Levelの試験科目として、学校でコンピュータサイエンスを学び始めたグリムジーさん。第2回は、学校でグリムジーさんが感じた「授業の詰まらなさ」と、その理由を紹介する。
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