金融機関が明かす「クラウドでコストを減らせない企業」の特徴はこれだ:「クラウドの真実」を金融機関CTOに聞く
クラウドサービスの導入が、期待した効果を生まないことがある。そうした課題に直面する企業には“ある傾向”があると、金融機関Credit SuisseのCTOは主張する。それは何なのか。
「企業がクラウドサービスを利用してイノベーションを起こし、生産性を高めようとしても、技術コストの上昇という現実に対処しなければならないことがある」。証券・投資銀行業務を手掛ける金融機関Credit Suisse(クレディ・スイス)で最高技術責任者(CTO)を務めるジョアン・ハンナフォード氏は、2022年11月開催のカンファレンス「Singapore Fintech Festival」でこう強調した。
「クラウドでコストを減らせない企業」の特徴はこれだ
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ハンナフォード氏によると、技術コストの増加が特に顕著なのは、クラウドサービス移行時に、移行対象のアプリケーション数を重視し過ぎる企業だ。全面的なクラウドサービス移行を進めた企業は特に、クラウドベンダー1社に頼る傾向がある。「クラウドベンダーの選択肢は複数あったのに、特定ベンダーの仕組みに特化した形でアプリケーションを再構築してしまい、他のベンダーを利用できなくなることがある」と同氏は指摘する。
利用するクラウドベンダーを1社に絞ると、スケーリング(利用リソースの増減)がしやすくなり、単一のデータファブリック(異なる場所に点在するデータを一元的に扱うアーキテクチャ)を構築できるといったメリットがある。そうだとしても、コストと手間は次第にかさんでいく可能性がある。
「アプリケーションをどこでも稼働できる状態にするためには、最適なインフラを選ぶ必要がある」とハンナフォード氏は指摘する。選択するインフラは、オンプレミスインフラとクラウドサービスのインフラを組み合わせて利用する「ハイブリッドクラウド」であろうが、複数のクラウドサービスを活用する「マルチクラウド」であろうが、独自のデータセンターであろうが「構わない」というのが、同氏の見方だ。
インフラの選択時に重要なのは、そのインフラによってどのような成果が得られるかを判断することだ。「単一のクラウドベンダーをひいきにすることのリターンは大きいが、コストもユーザー企業の予想よりはるかに高くなっている」とハンナフォード氏は指摘する。
同様に重要なのは開発者の生産性だ。「月曜の朝にソースコードを記述し、火曜の朝には運用環境で稼働できるような環境を開発者に与えなければならない」とハンナフォード氏は語る。企業は一般的に、開発者の生産性を高めるためのツールを積極的に用意しようとはしない、というのが同氏の見解だ。「こうした企業ほど新しいツールの導入には大きなハードルがあり、コストと手間がかさむことになる」(同氏)
後編は、銀行持ち株会社JPMorgan Chaseが開発者の生産性を高めるために実施している取り組みを紹介する。
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