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金融機関を狙い始めた「カーペットボンビング」の脅威金融機関を狙うDDoS攻撃の脅威【後編】

英国金融行為規制機構(FCA)は、英国の金融機関のセキュリティインシデントに関する状況を公表。その中で目立ったのが、「カーペットボンビング」という攻撃だ。

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 2022年7月、セキュリティ専門機関Picus Securityが英国金融行為規制機構(FCA)に情報公開請求(FOI)を実施。その結果、英国の金融サービス業界に対するDDoS(分散型サービス拒否)攻撃が増加傾向にある状況が明らかになった。その中でも、「カーペットボンビング」または「絨毯(じゅうたん)爆撃」と呼ばれるDDoS攻撃が目立っている。

「カーペットボンビング」攻撃とは

 FCAは、英国の金融機関を規制する責任を負う。英国の金融機関は重要なセキュリティインシデントを速やかにFCAへ報告しなければならない。FCAは「重要なセキュリティインシデント」を以下のように定義する。

  • データやITシステムの可用性または制御に重大な損失をもたらすもの
  • 被害者への影響が広範に及ぶもの
  • ITシステムへの不正アクセス、または悪意のあるソフトウェアが存在するもの

 FCAが英国の金融機関から報告を受けたDDoS攻撃の中には、狙ったサーバだけでなく周辺のサーバをまとめて攻撃するカーペットボンビングも含まれていた。この攻撃は、標的となる複数のIPアドレスに対して同時に攻撃するが、一般的に各システムの閾値(しきいち)を超えない程度のトラフィック(ネットワークを流れるデータ)量しか送らないため検知が難しい特徴を持つ。

 カーペットボンビングは、従来は主にインターネットサービスプロバイダー(ISP)や、重要国家インフラ(CNI)の運営事業者を標的としてきた。Picus Securityは、いまや金融サービス業界もこの攻撃の標的となっていると指摘する。

 「カーペットボンビングの対策は難しい」と話すのは、Picus Securityの共同設立者で同社の研究部門Picus Labsのバイスプレジデントを務めるスレイマン・オザースラン氏だ。「この攻撃のリスクを軽減するためには、企業は大量のトラフィックを長期にわたって精査し、ネットワークの可用性を脅かす異変に迅速に対処しなければならない」(オザースラン氏)

 2022年上半期(1月〜6月期)にFCAが英国の金融機関から報告を受けた、重要なセキュリティインシデントの件数は55件で、2021年同時期の73件から25%減少した。このうち64%がサイバー攻撃によるものだった。2021年上半期から2022年同時期までの間に、マルウェアとフィッシングに関連したセキュリティインシデントの件数はそれぞれ75%減、50%減、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)は63%減となった。

 「金融機関からのセキュリティインシデントの報告件数が、2022年上半期に1年前よりも減少したことは喜ばしいことだ。しかし、この結果に満足してはいけない」とオザースラン氏は話す。

 サイバー脅威の進化に伴い、金融機関は引き続き積極的に防御体制を強化する必要がある。「利用するセキュリティ管理システムが、最新のサイバー脅威に対する保護機能を提供しているかどうかの検証も必要だ」とオザースラン氏は指摘する。

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