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農業系NPOが「プライベート5G」を導入 「IIoT」で何が可能に?通信網が行き届かない地域にも

オーストラリアの非営利組織AgriFood Connectが、「5G」をプライベートネットワークとして利用する「プライベート5G」を導入した。その目的とは。

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 オーストラリアの非営利団体(NPO)であるAgriFood Connectは2022年1月、「5G」(第5世代移動通信システム)をプライベートネットワークで利用する「プライベート5G」(ローカル5Gに相当)を導入した。この導入を支援したのは、通信機器ベンダーのEricssonと、通信事業者のTelstra Group(以下、Telstra)だ。AgriFood Connectは、どのような目的でプライベート5Gを導入したのか。

「プライベート5G」と「IIoT」で何が可能に?

 AgriFood Connectが導入したのは、Ericssonのプライベート5G製品「Ericsson Private 5G」だ。Ericsson Private 5Gは、「4G」(第4世代移動通信システム)の設備を使用せずに5Gの設備のみでインフラを構成する「SA」(スタンドアロン)の5Gネットワークを構築できる。SAは、インフラの一部に4Gの設備を使用する「NSA」(ノンスタンドアロン)の5Gネットワークよりも、通信速度を高速化しやすい。

 「農業と製造業はオーストラリアの経済成長において極めて重要だ」。AgriFood ConnectのCEO、トーマス・ホール氏はそう強調する。AgriFood Connectが重視するのは、大学や政府、企業といった多様な組織と協力しながら、農業と製造業に先進的な技術を導入することだ。例えば、農業食品の原材料の調達や製造、販売といった活動を一連の流れとして結び付ける仕組みの構築に取り組んでいる。

 AgriFood Connectは、同組織の活動に関わる企業がビジネスにデジタル技術を取り入れることにおいて課題を抱えがちだとみて、その支援にも取り組む。ホール氏は「Ericsson Private 5Gを活用して技術革新を支援するのが狙いの一つだ」と話す。

 Telstraの協力を得てAgriFood Connectが実現したのが、Ericsson Private 5Gを使った「IIoT」(産業用モノのインターネット)の構築だ。AgriFood Connectや、同組織の活動に関わる企業が所有する機器のモニタリングやデータ収集といった業務をIIoTが担う。これによって、機器の劣化状態の把握や、メンテナンスが必要な時期の予測が可能になる。機器の部品が故障することで生じるダウンタイム(システムや機器の停止時間)の短縮や、機器の修理にかかる費用の軽減にもつながる。

 Telstraでネットワークとインフラ部門の責任者を務めるイスクラ・ニコロバ氏は、プライベート5Gはオーストラリア国内で人がほとんど住んでいない地域で活用できる可能性があるとみる。そうした地域ではバックホール(中継回線)の設備が十分に整っていないことが通例だ。それでもプライベート5Gを導入することで、農業や製造業を営む組織は、IIoTを介して動画解析やデータ活用ができるようになるとニコロバ氏は期待する。

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