「5G」で“企業の悩み”に挑むシンガポールの産業変革:シンガポールの先進的な「5G」活用事例【後編】
企業向け「5G」の開発や活用を進めるシンガポール。どのような取り組みが実施されているのか。世界でも“先進的”だという取り組みとは。
シンガポールで企業向け「5G」(第5世代移動通信システム)の用途開発が広がっている。同国が5Gに期待するのは、各業界の変革だ。海運業界と自動車業界における取り組みを紹介する。
シンガポールが「5G」で挑む産業変革
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連載:シンガポールの先進的な「5G」活用事例
各国が取り組む「5G」活用の事例
シンガポールにおける5G活用の取り組みの一つが、同国の情報通信メディア開発庁(IMDA)と海事港湾庁(MPA)が実施する、港湾業務における5G活用推進テストベッド(試験用環境)「5G@Sea」だ。
5G@Seaで使用する5Gネットワークは、シンガポールの通信大手M1が提供する。同社のCEOマンジョット・シン・マン氏は、「5Gは企業が長年抱えてきた問題を解決する可能性を秘めており、海運業界がこの技術の活用に取り組むのは自然なことだ」と語る。
M1が5G@Seaで提供する5Gネットワークは、4Gの設備を使用せず5Gの設備だけで構成するSA(スタンドアロン)を採用している。マン氏は「SAの5G受信域を海上に広げるのは世界でも最先端の取り組みであり、M1はIMDAやMPAと共同で技術開発できることに興奮している」と話す。同氏はこの取り組みはシンガポールの海運業界に変革を起こし、経済を潤すと予測する。
シンガポールではM1の他、Singapore Telecommunications(Singtel)といった通信大手も、製造業や建設業、遠隔操作が求められている分野などにおいて5G活用を推進している。Singtelは2022年8月、ドイツの自動車部品メーカーContinentalと契約を締結した。この提携の目的は、Continentalの車両システムの状況認識機能を強化することと、それによって交通の安全性を向上させることだ。
Singtelは同社の5Gネットワークと、「MEC」(マルチアクセスエッジコンピューティング)サービス「Singtel Paragon」をContinentalに提供する。MECとは、データの発生源の近くでコンピューティングをする「エッジコンピューティング」に、モバイルネットワークを取り入れる仕組みを指す。5GネットワークとSingtel Paragonを組み合わせることで、広い帯域幅(通信路容量)や低遅延なネットワークをMECに取り入れることが可能になる。
Singtelでグループエンタープライズおよび地域データセンタービジネス担当CEOを務めるビル・チャン氏は、同社の技術をContinentalが持つ自動車の専門知識と組み合わせることで、以下を促進できると話す。
- 自動運転や遠隔運転といった次世代モビリティ技術の開発
- 車両の稼働状態を把握して管理を最適化するフリートマネジメント
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