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ゲノム解析機関が「SSD」を使いながらも“コストを抑制”できる理由ゲノム解析とストレージ【第3回】

フランスの医療協力連合SeqOIAは、高スループットを実現するストレージシステムの実現に当たり、幾つかの課題に直面した。SeqOIAが導入した、無駄が出にくいストレージシステムとは。

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 フランスの医療協力連合(GCS:Groupement de Cooperation Sanitaire)であるSeqOIA(Sequencing Omics, Information Analysis)は、同国におけるゲノム(遺伝情報)解析を推進する。同機関はHDDを使った従来のストレージシステムに課題を抱え、新しいストレージシステムを導入することにした。

無駄なコストは避けて「スループット向上」を実現

 SeqOIAは2021年末、新しいストレージシステムの選定に着手した。同機関の情報システム担当ディレクターを務めるアルバン・レルミン氏は、「選定に当たりSSDに興味を持った」と話す。SSDはHDDよりもスループット(データ転送速度)を高めやすいからだ。SeqOIA設立当初の2016年と比べて、NAND型フラッシュメモリの価格が下落傾向にあったことも一因だった。

 ゲノム解析に必要な容量として、SeqOIAは400TBを必要とした。同機関が想定していたのは、解析後のデータをソフトウェア定義ストレージ(SDS)製品「Scality RING」で構築したオブジェクトストレージに保管する仕組みだ。

 ストレージシステムの更改に当たり、SeqOIAはHewlett Packard Enterprise(HPE)、Pure Storage、VAST Dataの3ベンダーの製品を検討。最終的に、VAST Dataのストレージシステム「Universal Storage」を導入することにした。Universal Storageを採用する決め手になったのは、SSDの数を増やさずにI/O(データの入出力)管理用のモジュールを追加できる点だった。レルミン氏は「I/O要求の限界に達した場合に、ストレージアレイを追加することは避けたかった」と話す。

 SeqOIAが採用した Universal Storageは、1つのメモリセルに4bitを格納する記録方式「クアッドレベルセル」(QLC)のNAND型フラッシュメモリを搭載したSSDを使用する。ストレージインタフェースには「NVMe」(Non-Volatile Memory Express)を採用している。

 QLCは他の記録方式によるNAND型フラッシュメモリと比較すると安価だが、耐久性が低くなる傾向にある。そのため、不連続のデータを読み書きするランダムアクセスよりも、連続したデータを読み書きすることでI/O数を抑制しやすいシーケンシャルアクセスに適する。SeqOIAのストレージシステムは、DPU(データ処理装置)を介してシーケンシャルアクセスを実現し、I/Oを抑制しやすい設計にしている。


 第4回は、SeqOIAが新しいストレージシステムをどのように導入したのかについて解説する。

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