クラウドを見据えたファイルサーバ集約【後編】
“脱Windows”でファイルサーバを集約 オハヨー乳業のグループ全社の狙いは?
ファイルサーバの「脱Windows」を図ると同時に、ファイルサーバの集約に取り組んだオハヨー乳業のグループ全社。大きな見直しの狙いと、その成果とは。
乳製品メーカーのオハヨー乳業と菓子メーカーのカバヤ食品を傘下に持つ日本カバヤ・オハヨーホールディングスは、51拠点に配置していた「ファイルサーバ」の運用を2022年に見直した。MicrosoftのサーバOS「Windows Server」をファイルサーバ構築に利用する方法から脱却すると同時に、各拠点にあった全63台のファイルサーバを11台まで集約。その大掛かりな見直しの狙いは、何なのか。
ファイルサーバの“OS変更”で大きな見直し
日本カバヤ・オハヨーホールディングスはNetAppのストレージOS「ONTAP」を中心としたシステムによってファイルサーバを刷新した。導入前の課題や、導入後の構成は以下で紹介した。
特に大きな変更点となったのは、Windows Serverの利用をやめて、ONTAPを中心にした設計に変更したことだ。グループ全社のIT運用を担うリンク&リンケージでIT事業部の業務を統括する難波 毅氏によれば、これに伴いOSに関連する脆弱(ぜいじゃく)性の発生件数が格段に減った。その他「Windows Serverのセキュリティ更新プログラムの適用作業から脱却できた点が大きい」と難波氏は話す。Windows Serverの定期的に発生する更新作業ではトラブルが発生しがちだったが、ONTAPの自動更新においては特に問題は発生していないという。
リンク&リンケージでファイルサーバの移行作業を担当した野谷怜志氏によれば、検討当初は利用するOSを変更することへの不安はあったと振り返る。ただし運用が変わったことにおいて、特に問題は生じなかったという。「ONTAPはGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)で操作することもできるため、操作になじみやすい特徴があります」と野谷氏は話す。
「ファイルサーバの台数が減ったこともあり、障害発生のリスクを大幅に低減できました」。そう語るのは、ファイルサーバの移行作業を担当したリンク&リンケージの川上真二氏だ。従来のファイルサーバではハードウェア故障への対処に手間が掛かることがあったのに対し、新システムでは2022年8月の導入完了移行、半年ほど経過しても故障は発生していない。
クラウドサービスの運用調整でコストは4割減
日本カバヤ・オハヨーホールディングスはファイルサーバ集約の検討当初、トータルコスト(TCO)を従来と同水準に抑制する方針だった。だが難波氏は「トータルコストは結果的に4割ほど削減できた」と説明する。予想に反してコスト削減が実現したのは、クラウドサービスの利用料金が影響したところが大きいという。例えばMicrosoftのクラウドサービス群「Microsoft Azure」の予約インスタンス(事前に予約することで割安に利用可)の利用や、仮想サーバの開始と停止の制御などによって料金を抑制できている。
ファイルサーバを集約することで懸念される点の一つは、長距離で接続する場合の遅延だ。その点ではエンドユーザーから特に不満は出ていない。AFF A250とFAS2720を階層化するという点では、エンドユーザーが気付かないところでデータの保存領域がSSDからHDDへと変わっていることがある。それでも特にデータの取り出しに時間がかかる印象はなく、フォルダの移動や開封においてはむしろ「以前よりも速い」「ローカル(拠点)にあるのと区別が付かない」といった声がエンドユーザーから出ているという。難波氏はこれについて「想定外の効果だった」と話す。
一方で、ネットワークの帯域幅(回線容量)の利用については改善の余地があるとリンク&リンケージはみている。拠点に設置したファイルサーバは、データセンターのFAS2720へ、NetAppのレプリケーションソフトウェア「SnapMirror」によってデータを転送する仕組みを採用している。初回のデータ転送後は変更点のみを転送する仕組みであるため転送容量は徐々に減るものの、川上氏は「他の業務用の帯域幅を圧迫しないように、転送の時間帯と帯域幅をうまく調節できるとよい」と話す。
シンクライアント化も視野に入れて検討
日本カバヤ・オハヨーホールディングスのファイルサーバ集約の取り組みは、これで全てが終わってはいない。ファイルの格納場所がさまざまなストレージに散在することがなくなり、エンドユーザーにとってはいつでもストレスなく使える状態が実現した。データの格納場所がAFF A250とFAS2720の間で自動的に変更されるという点では、同社が目指す「ファイルがどこに保存されているのかを意識しなくてよい状態」に一歩近づいたと言える。同社は今後、グループ内のネットワークの再構築や、クライアントPCの「シンクライアント化」を視野に入れる。
難波氏は「クラウドサービスに全てのデータを自動的に集約できるインフラの構築を目指しています」と話す。クライアントPC側にデータを置かないシンクライアント化を検討するのも、その方針の一環だ。クライアントPCにデータを散在させないためには、クライアントPCでのデータ保管を禁止するルールを設けるのも選択肢になるが、そうしたルール前提の運用は考えていないという。「データをどこに保存するのかについて、エンドユーザーが何も意識しなくてもよい状態を目指しています」と難波氏は語る。
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