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“同時通訳”も視野に ホテルチェーンが「スモールセルの5G」を使う納得の理由ホテル業界の5G活用術【前編】

スペインのホテルチェーン大手は、「5G」を活用して宿泊客の満足度を向上させるための取り組みを進める。どのような技術を用いて、何を実現するのか。

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 ホテルにはビジネスや観光などさまざまな目的で宿泊客が訪れる。宿泊客はホテルにおけるネットワーク接続に問題を抱えがちだ。スペインでホテルチェーンを運営するMelia Hotels Internationalは、宿泊客に各種のデジタルサービスを提供する。同社は宿泊客の満足度を向上させるために、「5G」(第5世代移動通信システム)の活用に乗り出した。

ホテルが採用した「スモールセルの5G」

 Melia Hotels Internationalは、「4G」(第4世代移動通信システム)の設備を使用せず5Gの設備だけで構成するSA(スタンドアロン)の5Gネットワーク「5G SA」を、同社の系列ホテルMelia Madrid Serranoで試験運用する。同社は5G SAの他にも、ネットワーク回線を複数の論理ネットワークに分割する「ネットワークスライシング」や、4Gの設備を併用する「NSA」(ノンスタンドアロン)の5Gネットワークも活用する。ネットワークスライシングを5Gネットワークに実装する事例は欧州では先進的な試みだ。

 今回の試験運用はスペインの公的事業体Red.esが共同出資したプロジェクトの枠組みで実施する。通信事業者Telefonicaや通信機器ベンダーEricsson、半導体ベンダーIntel、ソフトウェア開発業者ILC Progress(Lingmo Internationalの名称で事業展開)などが連携して取り組む。

 Melia Hotels Internationalは、Ericssonが提供する「4x4 MIMO」(4本ずつのアンテナで同時に送受信する技術)の小型スモールセル「Ericsson Radio Dot System」を使ってホテル敷地内に5G SA受信域を設ける。このネットワークにはネットワークスライシングを採用する。EricssonはEricsson Radio Dot Systemについて、「どのような屋内環境にも適応できるモジュール方式の設計だ」と説明する。Intelはエッジコンピューティング用のサーバを提供し、Lingmo Internationalは同時通訳のソフトウェアを開発する。

 Melia Hotels Internationalは、試験運用でホテル内のさまざまなエリアに5G SAと5G NSAの受信域を設け、ネットワークスライシングを用いて多様な用途のニーズに応えられるようにする。具体的には、同時通訳やストリーミング配信動画などだ。


 後編は、Melia Hotels Internationalが試験運用で実現するサービスの詳細について紹介する。

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