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会社にしがみつかない「ギグワーカー」が守られると困るのは誰?「ギグワーク」の明と暗【後編】

米国政府が「ギグワーカー」の立場を守るための規制の整備を次々に進めている。こうした背景にはどのような事情があるのか。規制の中身とは。

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 「ギグワーカー」は、インターネット経由で単発や短期の仕事(ギグワーク)を請け負う労働者を指す。ギグワーカーの代表的な仕事の内容は、Webサービスのマッチングアプリケーション経由で請け負うレストランの料理や小売店舗の商品配達、家の修理といったオンデマンドの作業だ。

 連邦取引委員会(FTC)は、2022年9月に発表した政策文書の中でギグワーカーを“不安定”だと表現。ギグワーカー保護の姿勢を鮮明にした。FTCは何をしようとしているのか。

「ギグワーカー」が守られる時代に――困るのは誰?

 この政策文書でFTCは、ギグワーカーが有色人種に偏っていることを指摘。雇用主はギグワークを“働き方の融通が利く仕事”だと定義して推進する一方で、実際にはギグワーカーの仕事内容を「厳しく規定、管理している」とFTCの報告書は批判する。こうした背景からFTCは、ギグワーカーの保護を規制の優先事項として考えているという。

 ギグワーカーは、不安定な報酬や経費の負担など「過度のリスクを背負わされる」可能性がある。そのためFTCはギグワーカーに仕事を依頼する企業に対し、ギグワーカーへの報酬支払い方法について、より厳格な監視を求めている。

 米国労働省は、FTCよりもさらに先を行く。2022年10月、公正労働基準法(FLSA:Fair Labor Standards Act)の下で、独立請負業者を従業員に再分類することを容易にする新しい規制を発表した。ギグワーカーは概して従業員ではなく、独立請負業者だとみなされてきた。

 この規制について法律の専門家は、独立請負業者を使用する企業に大きな影響を与える可能性があると指摘している。法律事務所Holland & Knightは「この規制は、雇用主に新たな不確実性をもたらす可能性がある」と述べる。

 米国政府説明責任局(GAO:Government Accountability Office)は2022年11月の報告書で、米国株価指数S&P 500に含まれている大手上場企業500社の年次報告書のうち80件を抽出。各社がどの程度、独立請負業者を利用しているかを調査した。調査の結果、約89%が独立請負業者を利用していると回答。その大部分はITサポート、人材、メンテナンスサービスに関するものだった。

 GAOによると、回答企業の約84%が「能力不足、セキュリティ違反、独立請負業者が重要な活動を実施することに起因するリスク」を年次報告書に記載。独立請負業者の利用にはリスクが伴うと考えていた。

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