公共放送局BBCが明かす「DX予算不足」よりも厄介な“あの問題”とは?:BBCのDX戦略に立ちはだかる「理想と現実」【第4回】
公共放送局のBBCはDXを進め、事業の軸を放送からデジタル配信に移行させようとしている。予算に制限があることは、同局にとって大きなハードルであることは確かだ。実はそれ以外にもDXを阻む“ある問題”がある。
公共放送局BBC(英国放送協会)は積極的にデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する姿勢を表明しているが、計画遂行能力や予算などに課題がある――。英国会計検査院(NAO:National Audit Office)は2022年12月に公開した報告書「A digital BBC」で、こう指摘した。公共放送局としてDXを進める上で、当のBBCはどのような課題を認識しているのか。
BBCがDX推進で直面した「予算不足」だけじゃない“あの問題”
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連載:BBCのDX戦略に立ちはだかる「理想と現実」
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NAOの報告書が示した懸念を受けて、英国公会計委員会(PAC:Public Accounts Committee)は2023年1月、BBC幹部を呼んで証人喚問を実施した。PACの質疑に対してBBC会長のティム・デイビー氏は「“信じられないほど困難な環境”でBBCを運営している」と前置きしつつ「必要な改革のための体制は整っており、NAOが表明した懸念に対処できると確信している」と主張。BBCの長寿テレビドラマシリーズ『Doctor Who』の新シーズン(2023年後半に開始)を、Walt Disneyの動画配信サービス「Disney+」で配信することを例に挙げ、BBCが積極的な商業計画を持っていることを強調した。
BBCが直面しているデジタル分野の変化と、それを克服するための対策について、PACはBBC幹部に質問した。同局の最高製品責任者(CPO)ストーム・フェイガン氏はこれを受けて「大きな課題の一つはデータの扱いだ」と率直に明かした。「データを利用する方法に関して、世界的に大きな変化が起きている」(フェイガン氏)
NAOの報告書には、BBCが抱える主要な3つの課題についての記述がある。検索、レコメンデーション、メタデータ利用だ。BBCの事業の軸が放送からデジタル配信に移行すると、こうしたデータ活用技術の重要性が高くなる。「BBCのDXは受信料制度のプレッシャーがある中で公的資金を投入する取り組みであり、今後も注意深く監視を続ける」とPACは警告する。
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