給与を払えない――シリコンバレー銀行の破綻が招いた“予想外の事故”とは:シリコンバレー銀行破綻の余波【前編】
2023年3月にシリコンバレー銀行が経営破綻したことで、“あるソフトウェア”のユーザー企業が給与支払いトラブルに見舞われた。何が起きたのか。
「シリコンバレー銀行(SVB:Silicon Valley Bank)が破綻した影響が、自身の給与にまで及ぶとは思いもしなかった」。NPO(非営利団体)UR Community Caresの代表理事を務めるミシェル・プッツォ氏は、こう振り返る。米国連邦預金保険公社(FDIC:Federal Deposit Insurance Corporation)がSVBの経営破綻を発表した2023年3月10日(現地時間)、プッツォ氏はいつも通り給与を受け取れると思っていたが、現実はそうならなかった。
SVBの口座から、ブッツォ氏の口座に給与が振り込まれるまでには、幾つもの段階がある。
給与支払いに必要な“あのソフトウェア”にトラブルが
UR Community Caresは米国コネチカット州マンチェスターを拠点とするボランティア団体だ。高齢者や障害者の介助や家事手伝い、車の運転までさまざまな支援を提供している。同社の給与処理をしていたのが、現地の会計事務所Accounting Connectionsだ。
Accounting ConnectionsはUR Community Caresの給与支払いに、給与計算システムベンダーPatriot Softwareの給与管理ソフトウェアを使っていた。Patriot Softwareは、給与前払いや課税管理などでユーザー企業の資金を預かる際に、SVBの口座を利用していたのだ。そのためSVBの経営破綻によって、給与支払いに支障を来すことになった。
SVBの経営破綻は、企業との取引の最前線で働く給与計算業務の専門家を筆頭に、各所で大きな影響を及ぼした。給与の振り込みが預金残高に表示されず、給与処理担当者は関係者に事情を説明する必要に迫られた。プッツォ氏は、給与処理を委託しているAccounting Connectionsが自分の質問に答え、常に最新の情報を提供し続けたことを高く評価している。
Accounting Connectionsの共同経営者ジョリー・スワンソン氏は「顧客企業に情報を提供し続け、小規模企業が給与支払いを継続できるよう、対策に力を入れた」と話す。スワンソン氏は「SVBの経営破綻は、給与計算システムだけではなく、私たち自身にも大きな衝撃を与えた」と振り返る。同氏によれば、同社は顧客企業と直接連絡を取って「われわれが、貴社の従業員の給与、納税の処理を担当している」と説明し、顧客企業からの質問に答えた。
中編はSVB経営破綻の直後、Patriot Softwareがどのように顧客企業に事態の説明をしたのかを紹介する。
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