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「合併を繰り返した銀行」がクラウドを避けたがる本当の理由銀行のクラウド移行に残る課題【前編】

金融機関にはクラウドサービスの導入を妨げる特有の事情がある。金融機関のクラウドサービス活用の状況と、クラウドサービスの導入を妨げる障壁とは。

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大する中で、アジア太平洋地域の銀行や金融サービス企業は、クラウドサービスの利用をますます進めている。その目的は人工知能(AI)技術といった技術やデータを生かし、ビジネスを変革することにある――。これはアジア太平洋地域のクラウドサービス業界団体Asia Cloud Computing Association(ACCA)が公開した調査結果だ。

 アジア太平洋地域の金融サービス業界のクラウドサービス導入状況に関する調査報告書「ACCA Better on the Cloud: Financial Services in Asia Pacific 2021」でACCAは、金融サービス業界は「クラウドサービス移行によって急速なイノベーションを実現する時期が来ている」と主張する。「金融機関は顧客応対とオフィス業務の両方をデジタル化するためのITスキルを付けつつある」と同団体は指摘。従業員と顧客の両方がデジタル化による取引や事務などの業務効率の向上を実感していることから、デジタル化の急速な進行が「ニューノーマル」になると予測する。

合併を繰り返した金融機関のクラウド移行が難しい“あの問題”

 IT調査会社IDCによると、日本を除くアジア太平洋地域の金融機関によるクラウドサービス関連の支出は、2019年は49億ドルだったのが、2024年には3倍以上に増加し、CAGR(複合年間成長率)は平均29.9%となる見込みだ。同社は2023年までに、アジア太平洋地域の大手銀行の85%が従来型のオンプレミスインフラもしくはプライベートクラウドで稼働する自社システムと、パブリッククラウドで稼働する自社システムを整理し、ITインフラ戦略を再構築することになると予想している。

 アジア太平洋地域の金融機関はクラウドサービスの活用に情熱を注ぐ一方で、クラウドサービス移行の障壁に直面する場合がある。特にM&A(合併買収)で獲得したレガシーシステムを複数個抱えている大手銀行は、クラウドサービス移行が困難になる。

 Googleでクラウドサービス群「Google Cloud Platform」(GCP)のアジア太平洋地域担当バイスプレジデントを務めるカラン・バジュワ氏は「大手銀行にとっては、異なるデータマネジメントシステムを統一して顧客のデータを一元管理できるようにすることよりも、M&Aを完了させることの方が重要な業務だった」と話す。

 金融機関はレガシーシステムのモダナイゼーション(最新化)に向けた取り組みを進めている。ただしバジュワ氏の指摘によると、その取り組みは主に情報系などの周辺システムに限られている。「いまだに複数のシステムを抱え、身動きが取れなくなっている金融機関もある」と同氏は説明。このことが、金融機関が新しい市場で新しいサービスを提供することや、FinTech(金融とITの誘導)の新興企業と競争する能力を妨げていると指摘する。金融機関が複数のレガシーシステムの管理を続けると、サイバー攻撃者が狙う攻撃対象が大きくなることも課題となる。

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