「プライベート5G」活用に踏み込んだ精神医療機関 その狙いとは?:英国医療機関の5G事例【前編】
英国の精神医療機関サウスロンドン&モーズリーNHS基金トラストが、傘下病院に「プライベート5G」を導入し、デジタルヘルス用途の実証実験をしている。その具体的な用途とは。
英国の精神医療機関サウスロンドン&モーズリーNHS基金トラスト(SLAM:South London and Maudsley NHS Foundation Trust)は、運営する関連病院に「5G」(第5世代移動通信システム)のインフラを導入した。この取り組みは実証実験として、「スマート医薬品保管庫」や「e-observation」(在宅および入院患者の生体情報モニタリング)など、医療に関する新たな活動を推進する。5Gはそのためのプライベートネットワークになる。
SLAMの「5Gを活用した医療」とは
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SLAMは英国の国民保健サービス(NHS:National Health Service)傘下の精神医療機関で、ベスレム王立病院、ランベス病院、ルイシャム病院、モーズリー病院を運営している。「プライベート5G」を導入したのは、臨床医と患者の双方にとって革新的なデジタルヘルスの在り方を模索する実証実験をするためだ。同機関はその一環で、5Gを活用したイノベーション創出を目指す組織「Maudsley Digital Lab」を設立した。
実証実験は、人工知能(AI)技術や拡張現実(AR)、モノのインターネット(IoT)を病院の重要な医療行為で活用し、効率性や安全性、セキュリティの利点を調査する。Maudsley Digital Labには、NHS Digital(NHSでIT活用の司令塔となる組織)が資金を提供している。
SLAMはNHS Digitalの他、通信事業者のVMED O2 UK(Virgin Media O2の名称で事業展開)、通信機器メーカーのNokia、ITベンダーのBruhati Solutionsと共同でシステムの開発に当たる。2022年7月時点ではベスレム王立病院の2病棟で運用を開始しており、さまざまなユースケースを検証することになっている。
例えばe-observationシステムを使って、臨床医がモバイルデバイスから患者の記録を更新できるようになれば、時間の節約と情報の精度向上につながる。スマートデバイスとさまざまなモニタリングデバイスを連携させて情報をリアルタイムで取得すれば、高価な医薬品を無駄にするリスクを減らしたり、病棟の空気の質を追跡したりすることが可能になる。
病院のIT部門はARによるリモート支援ツールを使うことで、他院にいる専門家の支援を受けやすくなる。監視用の「CCTV」(閉回路テレビシステム)の映像をAI技術で分析して、人の動きをヒートマップで表現すれば、公共エリアの空間計画を改善するための情報を取得できるようになる。
中編は、SLAMが検証する5Gのユースケースについて、詳しく紹介する。
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