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「定年退職したレガシーエンジニア」を高給で奪い合う企業の本懐時代が求める「50歳以上のITエンジニア」【前編】

レガシーシステムに精通したITエンジニアであれば、高額の給与を支払ってでも手に入れたい――。そう考える企業が少なかならずある。主な獲得ターゲットは、退職した50歳以上の中高年齢者だ。

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 IT人材コンサルティング会社VIQUのマネージングディレクターであるマット・コリングウッド氏は最近、2014年に退職したITエンジニアの再就職を支援した。このITエンジニアは、メインフレームで広く利用されているプログラミング言語「COBOL」と、IBMのメインフレーム向けトランザクション処理用ミドルウェア「CICS」に精通していた。

 このITエンジニアは再就職先と日当850ポンドで雇用契約を結んだ。このITエンジニアの退職前の日当は、375ポンドだったという。実に2倍以上の“昇給”だ。

退職者をなぜ高給で採用?

 定年退職や早期退職をした50歳以上の中高年齢者に、再就職を促す――。こうした動きが英国で起こっている。過去にIT業界で活躍し、レガシーシステムに関する知識と経験がある退職者は、求人市場に戻ってくると、IT業界には「喜んで雇用契約を結び、高額の報酬を支払ってくれる企業」が少なからずあることに気付く。

 レガシーシステムを使用し続けている企業は少なくない。「銀行や保険業界では特にそうだ」とコリングウッド氏は語る。こうした企業は「フロントエンド(エンドユーザーの目に見える部分)の更新には着手しても、バックエンド(エンドユーザーの目に見えない部分)を変えようはしない」と同氏は説明する。

 「企業は既存のシステムを完全に置き換えるのではなく、ビジネスニーズの変化に合わせて、レガシーシステムを強化する姿勢を貫いている」とコリングウッド氏は指摘。こうした企業にとって、レガシーシステムの知識や経験を持つ退職者の採用は「改修を重ねた、ビジネスに不可欠なアプリケーションを稼働させ続けるための、貴重でコスト効率の高い選択肢となる」という。

 知識や経験を持つ退職者が職場に戻ってくることは「若手のITエンジニアにポジティブな影響を与えるとの見方がある」とコリングウッド氏は言う。実際、レガシーシステムに精通した退職者や請負業者を採用して、若手ITエンジニアのスキルアップを図ろうとする企業がある。

 現実は甘くはない。肝心の若手ITエンジニアは「レガシーシステムに興味がなく、積極的に学ぼうとしない傾向がある」とコリングウッド氏は指摘。「このままではレガシーシステムに依存する企業に対して、退職者が優位に立ち続けることになる」と注意を促す。


 次回は、英国政府が退職者の再就職を推し進める背景を探る。

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