Google調査で分かった「景気悪化でESGを後回しにする企業」が直面するリスク:Google CloudのESG調査から【前編】
Google Cloudの調査によると、企業は景気悪化を背景にESG活動の優先度を下げる傾向が強まっている。経営幹部がESGの予算を削減しようとする動きに対して、専門家は警鐘を鳴らす。なぜなのか。
Googleのクラウドサービス部門Google Cloudが2023年4月に発表した、サステナビリティ(持続可能性)に関する第2回年次調査のデータによると、企業は「ESG」(環境、社会、ガバナンス)の取り組みへの投資の優先順位を下げ、目先の増収につながる活動を優先させている。
この背景にあるのはマクロ経済環境の厳しさだ。2022年の調査時では、ESGの取り組みは世界企業にとっての最優先事項だったが、2023年調査時にはその優先順位が3番目に下がった。これは企業がコスト削減を迫られているためだとみられる。
サステナビリティ活動の予算を切り詰めるのはなぜ“危ない”のか
Google Cloudはサステナビリティに関する調査レポート「Google Cloud Sustainability Survey 2023」を2023年4月に公開した。この調査はGoogle Cloudの委託で世論調査会社Harris Insights and Analytics (Harris Poll)が2023年1月に実施。アンケートで、16カ国の経営幹部1476人に自社のESG投資の優先順位などについて尋ねた。
その結果、回答者は「野心的なESG目標は達成できない」と考えていることが明らかになった。景気悪化に伴い、より少ないリソースでより多くの成果を挙げなければならず、売り上げにつながりそうな取り組みに割く時間を増やすように促されているからだ。
Google Cloudのグローバルサステナビリティ担当マネージングディレクターを務めるジャスティン・キーブル氏は、公式ブログのエントリ(投稿)で次のように警告する。「企業のリソースは乏しくなっている。説明責任の強化、測定と管理の改善、リーダーシップの明確な定義など、経営幹部が適切な措置を講じなければ、実行力の欠如が従来のリスクを悪化させる恐れがある」
経営幹部が「ESGの取り組みはコスト削減の対象」と見なすことに対して、キーブル氏は警鐘を鳴らす。消費者はサステナブルなブランドを積極的に受け入れる風潮が強まっているからだ。
調査によれば経営幹部の大部分(85%)は「顧客はサステナブルなブランドと関わり、取引する可能性が高い」と認識している。こうした状況がある一方で、キーブル氏は「経営幹部の78%が、これまでよりも少ない資金でサステナビリティの成果を達成しなければならなくなっている」と語る。同氏はサステナビリティ支出を長期的な投資ではなく、短期的なコストと捉えてしまうと、ビジネスチャンスを逃すことになると懸念する。
後編は、2022年4月にGoogle Cloudが公開した第1回年次調査のデータと比較しながら、第2回年次調査の結果を詳しく解説する。
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