通信会社Threeが「データセンターの省エネ化」に使う“2つの技術”:データセンターの消費電力削減【前編】
世界各地で増加するデータセンター。その消費電力量の抑制が社会的な課題となっている。英国の移動通信事業者が、築20年を超えるデータセンターを省エネ化するために採用した手法とは。
英国の移動通信事業者(MNO:Mobile Network Operator)Hutchison 3G UK(Threeの名称で事業展開)が、自社のデータセンターの省エネルギー(省エネ)化に取り組んでいる。この取り組みに際して同社が支援を求めたのは、英国でデータセンターのエネルギー管理サービスを提供するEkkoSenseだ。そのサービスの特徴を探る。
4つのデータセンターを省エネ化 その仕組みとは
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データセンターの消費エネルギー管理
EkkoSenseは、データセンターの消費電力削減に対して、AI(人工知能)技術と仮想現実(VR)技術を使ったサービスを提供している。ThreeはEkkoSenseのサービスを活用して、データセンターの冷却に必要な消費電力量を10週間で12.5%削減したという。
Threeが利用したのは、EkkoSenseのSaaS(Software as a Service)「EkkoSoft Critical」だ。同サービスは以下の機能を搭載しており、データセンター内の空調気流を可視化、分析することで最適な冷却状態を実現する。
- データセンターインフラ管理システム(DCIM)
- UPS(無停電電源装置)や空調機器、サーバラックといった機器をネットワークに接続して管理・監視
- 数値流体力学(CFD:Computational Fluid Dynamics)解析
- データセンター内の気流や温度分布を計算
- ビル管理システム(BMS)
- データセンター全体を監視
- エネルギーマネジメントシステム(EMS)
- データセンター内の温度、電流、電力などを監視
ThreeがEkkoSenseのサービスを活用したのは、築年数が20年を超える、4つのデータセンターの消費電力量を5%削減し、2つの目標を達成するためだった。1つ目が、エネルギー価格の高騰の影響を軽減すること。2つ目が、データセンターの運用状況をサービス活用前以上に把握することだ。
EkkoSoft Criticalの特徴の一つが、温度センサー機能を備えるIoT(モノのインターネット)機器の活用だ。データセンター内のサーバラックや冷却システムに温度センサーを取り付けることで、データセンターの空調の状態をリアルタイムに追跡することができる。
計測データは5分ごとに蓄積される。データに基づいたレポートを送信するように設定できるのもEkkoSoft Criticalの特徴だ。これにより、データセンターを冷却するための最適な方法を見極めることが可能になる。
ThreeとEkkoSenseは2023年3月、共同声明を発表した。声明によると、両社の取り組みの結果、「冷却エネルギー削減の初期目標196キロワットに対して200キロワットの削減が既に実現し、データセンター全体で総エネルギー量を5%削減するという当初の目標を達成した」という。
後編は、ThreeがEkkoSenseに支援を求めるようになった経緯や、実際の成果を整理する。
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