「クラウドは安い」という幻想に踊らされるのはもうやめよう:FinOps専門家に聞く「クラウドコストの真実」【前編】
ユーザー企業のクラウドサービスへの移行は性急過ぎた――。クラウドサービスのコスト管理手法「FinOps」の専門家は、こう強調する。ユーザー企業があらためて知るべき、クラウドサービスの真実とは。
「Finance」(財務)と「DevOps」(開発と運用の融合)から生まれた造語「FinOps」は、クラウドサービスへの支出を効率よく管理し、コストを削減するための運用モデルだ。FinOpsチームは、ユーザー企業の技術部門や経理部門、事業部門などに所属する、クラウドサービスの財務に関わる担当者で構成される。
FinOpsのガイドブック『Cloud FinOps: Collaborative, Real-Time Cloud Financial Management』の共著者であるマイク・フラー氏は、クラウドサービスの利用料金を管理することの難しさを認める。その上でFinOpsに関連するツールや知識が、長期的に組織の役に立つと考えている。
クラウドサービスのコスト管理の課題と、その克服方法をフラー氏に聞く。
“クラウドに性急に飛び付いた人たち”が正気に戻るべき時が来た
―― ユーザー企業が、クラウドサービスの料金に関して見落としがちなことは何でしょうか。
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フラー氏 特に大きいのは、クラウドサービスの請求書における粒度の高さだ。ユーザー企業の財務担当者は、月に数万行から数百億行に達する可能性のある、詳細な請求書を扱うことには慣れていない。
従来のデータセンターでは、単一の物理サーバごとにコンピューティングリソースのコストを計算できていた。クラウドサービスでは、利用するコンピューティングリソース全てに対して、個別の料金が発生する。
クラウドサービスの請求書の内容を理解するには、どのクラウドサービスを利用しているのか、それぞれがどのように機能しているかを把握する必要がある。クラウドサービスの請求書を掘り下げて理解しようとすると、最初に想像するよりもずっと複雑であることに気付く。
―― ユーザー企業がクラウドサービスを利用する上で陥りがちな失敗と、回避する方法を教えてください。
フラー氏 今まではオンプレミスシステムのクラウドサービスへの移行において、コストを考慮することは二の次になっていた。クラウドサービスへの移行によって、オンプレミスシステムよりもコストが安くなる可能性があることが、ユーザー企業のクラウドサービス移行の動機となってきたからだ。ただし実際には、クラウドサービスへの移行はかなり高くつく可能性があることが分かってきた。
これまでユーザー企業は、クラウドサービスへの移行を早急に進め過ぎる傾向にあった。クラウドサービスのコストの問題が周知されるにつれて、ユーザー企業の問題意識はクラウドサービス移行の手段から、クラウドサービスを利用するための準備やコスト管理の手法へと変化している。
後編は、クラウドサービスのコスト管理を取り巻く事情が、どのように変化するのかをフラー氏に聞く。
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