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テレワークでむしろ親密になった“異例”の「コミュニケーションツール」活用術離職率改善に向けてIT部門は何ができるか【第5回】

Investors in Peopleでは、テレワークを導入した結果、従業員と経営層との垣根が取り払われ、病欠が減った。この成果の裏側には、人事部門とIT部門のどのような努力があったのか。

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 従業員の定着率に直結する要素が、従業員エンゲージメント(組織との信頼関係)の改善だ。離職防止を食い止める特効薬のようなITツールは存在しないとしても、ITツールを効果的に使うことで従業員エンゲージメントの改善が期待できる場面は幾つもある。英国で人材管理の認定基準を制定する非営利団体Investors in People Community Interest Company(以下、Investors in People)の事例を紹介する。

テレワークでむしろ親密に――何をどう使ったのか?

 Investors in Peopleは、正式な会議はWeb会議ツール「Microsoft Teams」で開催する一方で、「コーヒータイム中のチーム雑談」には、Slack Technologiesのビジネスチャットツール「Slack」を使うようにしている。

 従業員の記念日を認識し、会話のきっかけを作る目的で、Slackの「BirthdayBot」(メンバーの誕生日を登録して、当日にお祝いメッセージなどを通知する機能)などを使うこともある。Slackと連携できるアプリケーション「Donut」を使えば、Slackのチャンネル参加メンバーの中からランダムなペアを選出し、雑談を促すこともできる。

 Investors in Peopleで組織開発と人材担当の責任者を務めるベス・サムソン氏は、テレワーク中の従業員を支援するには、従業員同士が互いにつながりを感じられるようにする方法が不可欠だと考えている。組織を視覚的に表現し、誰が誰と関わったかを理解するに当たって、同氏はMicrosoft Teamsの分析機能「Microsoft Viva Insights」を活用している。この機能を使う狙いは、あまり接点がない人々と関わりを持つための「意図的な努力」をすることにある。

 サムソン氏によれば、Investors in Peopleではテレワークが増え、従業員の連絡先がオープンになったことで、相手がCEOであってもアポイントなしに連絡したり即座に返答をもらったりすることが可能になった。その結果「今まで以上に、上級幹部と誰もが気軽に話せるようになった」と同氏は話す。

 こうした状況を毎週金曜日のミーティングで振り返ったり、四半期に1回「チーム全員が対面でミーティングする日」を設けたりするといった、活動の結果を振り返り交流する機会を作ることで、従業員同士が絆を感じられるようになったという。従業員への調査の結果「他のチームと連携して自身の職務を果たせている」と感じる従業員は全体の5分の4に達した。2021年の調査結果では約半数だったことと比べると、大きな変化だ。「上司への信頼がある」という回答は、2021年は41%だったが、2023年は90%になった。

 サムソン氏は次のように結論付ける。「従業員はテレワークに満足している。病気による欠勤が減ったことが、その結果だ。当社が重視するのは、可能な限り最高の従業員エクスペリエンスを提供する方法だ。それにはITが大きな役割を果たしている」

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