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「産業用メタバース」とは結局、何ができる仮想空間なのか?仮想空間がもたらす変革とは【前編】

製造業における産業用メタバースの活用が期待される。具体的には産業メタバースで何ができ、どのようなメリットをもたらすのか。企業のビジネスや従業員に与える影響を解説する。

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 3次元(3D)仮想空間「メタバース」は、製造業における活用が期待されている。「産業用メタバース」は、製造業のビジネスや従業員にどのようなメリットをもたらすのか。具体的に見てみよう。

「産業用メタバース」では結局何ができる? 製造業が期待する訳

 産業用メタバースがもたらすメリットの一つが業務効率化だ。仮想空間における機器の運用状況や、作業効率に関するデータをリアルタイムで取得し、市場ニーズの変化に合わせて製造工程の見直しができる。産業用メタバースでは「デジタルツイン」(現実の物体や物理現象をデータで再現したもの)の活用にも注目が集まる。ユーザーは送電網や車両基地、都市のデジタルツインからデータを取得し、運用に関するさまざまな洞察を得ることができる。現実世界を仮想空間で再現するだけでなく、実際に機器を制御することも可能だ。

 別のメリットとして、従業員のコミュニケーション活性化も挙げられる。産業用メタバースを活用することで、ユーザー間の国境を越えたコミュニケーションや知識の共有が活発化する。翻訳機能を産業用メタバースに取り入れることで、言語の壁やバックグラウンドの違いといった問題も緩和できる可能性がある。バーチャルガイドを用いた業務レクチャーや、ヒューマンエラー対策のガイダンスも産業用メタバースで提供可能だ。従業員のエンゲージメント(組織との信頼関係)やモチベーションの強化、高いスキルを持つ人材の採用にも期待が寄せられる。

 産業用メタバース向けのインフラを提供し、製造業のデジタル化を支援する企業の一つが通信機器ベンダーNokiaだ。同社が提供する無線網クラウドサービス「Nokia Digital Automation Cloud」(DAC)は、「5G」(第5世代移動通信システム)のプライベートネットワークである「プライベート5G」(ローカル5G)を顧客拠点で実現する。Nokiaでプラットフォーム部門のアプリケーションプログラムディレクターを務めるトゥーリ・アハバ氏は、「数年以内に産業用メタバースの導入規模や複雑性は爆発的に拡大する」と予測する。機器の運用監視や状況分析だけでなく、OT(制御技術)システムまで、産業用メタバースの活用場面は広がるという。

 産業用メタバースはまだ発展の初期段階にあるが、既にビジネスにおける活用は始まっている。「デジタル世界と物理世界の融合は、コスト低減や生産性向上、安全面の強化といったメリットをもたらし、幅広い業界に変革を起こす可能性がある」とアハバ氏は話す。


 中編は、メタバースが各業界で必要となる経緯について解説する。

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