Citiがバンキング業務を変えた理由 顧客は同じ話に“もううんざり”:銀行が考えるデータの生かし方【前編】
金融機関Citigroupは、パーソナライズされたサービスを顧客に提供することを重視している。そのためにはデータに基づく新たなシステムを導入する必要があった。取り組みの背景と併せて、どのような仕組みを導入したのかを紹介する。
金融機関Citigroup(以下、Citi)のパーソナルバンキング事業は、デビットカードやクレジットカードの発行、資産運用や住宅ローンの受付といった小口業務、預金の預け入れや貸し出しといったサービスを提供する。
Citiは、モバイルバンキングや電話応対の場合でも、来店時と同じようなパーソナライズされたサービスを顧客が受けられるようにすることを重視している。同行と顧客とのさまざまな接点において、顧客の興味や関心に合わせて最適化したサービスを提供できるようにする。例えば顧客の誕生日に特典を提供したり、旅行を予約する際に交通機関やエンターテインメントの利用割引を利用できるようにしたりすることで、顧客満足度を向上させることがゴールの一つだという。だが従来のシステムでは、それを実現できなかった。
“もううんざり”の顧客 システムの何が駄目だったのか?
Citiが顧客にパーソナライズされたサービスを提供することになった背景がある。社内でシステムやデータのサイロ化(連携せずに孤立した状態になること)が起こっていたことが原因で、顧客が望まないサービスを提供する事態に陥っていた。例えば、顧客がインターネットバンキングを利用している最中にクレジットカードの利用を提案し、顧客がそれを断ったにもかかわらず、後日また同じ提案をしていたという。
「顧客は自分の意向がCitiに届いているとは感じていなかった」。こう語るのは、パーソナルバンキング事業部で分析、テクノロジー、イノベーション担当の責任者を務めるプロミティ・ダッタ氏だ。「興味がない」と断ったのに、後日インターネットバンキングを再度利用する際にまた同じ提案をされる場面を想像して欲しいとダッタ氏は強調する。顧客は自分の声が銀行に届いていると感じるわけがない。
顧客分析記録(CAR)
Citiは、以下の情報をまとめた顧客分析記録(CAR:customer analytic record)を作成している。
- 口座情報
- 利用中の金融商品
- インターネットバンキングや電話、メール、実際の来店を含むやりとり
CARのデータを、CRM(顧客関係管理)ベンダーPegasystemsが提供する意思決定ソフトウェア「Pega Customer Decision Hub」と連携させる。Pega Customer Decision HubはAI(人工知能)技術を搭載している。顧客とCitiとのやりとりをリアルタイムに分析し、特定の時点で最適と考えられるサービスを顧客に提案することができるのだ。「顧客が現時点では関心がないと伝えたのであれば、そのサービスを押し付ける事態はなくなる」とダッタ氏は語る。
CARとPega Customer Decision Hubを連携させることで、顧客が本当に関心を示してくれそうな商品やサービスを提案することが可能だ。商品やサービスにフラグを立て、インターネットバンキングをはじめとした接点を通じて顧客に情報を提供できるようになる。
これらの仕組みを採用したことで、Citiの従業員からは「顧客とのやりとりに“大きな違い”が生まれている」との報告を受けているとダッタ氏は説明する。
中編は、Citiが新たなアプリケーションを導入する際に実施してきた取り組みを紹介する。
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