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生成AIの影響を受けやすい「9職種」 仕事はどう変わる?AIを味方に付けるための視点【中編】

生成AIなどのAI技術の台頭によって人の仕事はどう変わるのか。特に影響を受けやすいと考えられる「9つの職種」と、具体的にどのような業務で生成AIが使われるのかを紹介する。

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 人工知能(AI)技術の活用がさまざまな業務に広がっている。コンサルティング会社McKinsey & Companyが2023年6月に公開した、「生成AI」(ジェネレーティブAI)と人の業務との関係を分析したレポート「The economic potential of generative AI」は、人が担う業務の60〜70%を生成AIが自動化する可能性があると指摘した。この指摘は“人の雇用”に影を落とすものだが、生成AIには人の仕事に好影響を与える側面があることを忘れてはいけない。

 生成AIが影響を及ぼす可能性のある職種や業務には、どのようなものがあるのか。影響を受けやすいと考えられる「9つの職種」と、具体的にどのような業務が生成AIによって変わる可能性があるのかを紹介する。

生成AIの影響を受けやすい「9職種」

1.一般的なオフィスワーカー

 生成AIは、さまざまな部署に共通する以下のオフィス業務に活用可能だ。

  • 定型文を使ったメールの送信や返信
  • データの傾向分析
  • 時差がある地域にいる相手との、適切な会議時間の検索
  • 文章の要約

 例えば、Microsoftのオフィススイート「Microsoft 365」が搭載する生成AIツール「Microsoft 365 Copilot」は、オフィスワーカーの業務の生産性を劇的に向上させる可能性がある。Microsoftは、同ツールを2023年11月に一般公開すると発表している。

2.コーディング

 「ChatGPT」をはじめとした生成AIツールは、人間よりも速く、流ちょうで、構文として正しいソースコードを記述することができる。大量のソースコードを素早く記述できる能力を評価されているコーダーの中には、生成AIの台頭を前にして失業の心配をする人がいる。だが、自身が記述するソースコードに自信のあるコーダーは心配することはない。むしろ生成AI使って業務の効率化に取り組むことが可能だ。

3.カスタマーサービス

 カスタマーサービスでは、AIチャットbotを使ってさまざまな業務を自動化できる。例えば顧客からの質問に対して、顧客の特徴に特化した回答を迅速に提供することにAIチャットbotを使える。カスタマーサービスではAI技術以外にも、「RPA」(ロボティックプロセスオートメーション)やチャットbot、感情分析などが使われている。

 カスタマーサービスの業務におけるAI技術の活用は今後も広がりを見せると考えられる。顧客からの問い合わせを翻訳したり要約したりといった、業務負荷を軽減する取り組みは既に見られる。ただしコンタクトセンター業務全体の自動化を実現するにはまだ至っていない。

4.法務

 法務関連では、以下のような業務をAI技術で自動化できる可能性がある。

  • 契約書といった書類のレビュー
  • 契約書の確認
  • 法務調査
  • 類似判例の抽出

 AI技術が法務の業務に影響を与える可能性があることを示す報告が幾つかある。その一つがプリンストン大学(Princeton University)、ニューヨーク大学(New York University)、ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)の研究者が2023年3月に発表した論文「How will Language Modelers like ChatGPT Affect Occupations and Industries?」だ。同論文は、弁護士業務や、事務作業を担うパラリーガル、弁護士秘書の通常業務の大部分をAI技術がこなすようになると指摘している。

 2023年3月に金融機関のGoldman Sachsが発表した報告書は、米国の法律業務の44%をAI技術が自動化する可能性を示唆した。AIベンダーOpenAIの大規模言語モデル(LLM)「GPT-4」は、UBE(Uniform Bar Examination、全州共通の米国司法試験)で上位10%の成績をたたき出したという。

5.教職

 教職はさまざまな形でAI技術の影響を受ける可能性がある。AI技術を不正に利用した課題作成など、生徒や学生によるAI技術の不正利用を発見して対処するという仕事が必要になっている。一方で以下のように、業務の効率化に貢献する活用法も存在する。

  • 授業計画の素案作り
  • 小テストや模擬試験の作成

 AI技術に対する教職員の反応は、教職がAI技術に取って代わられることを心配するものから、教育には生徒や学生と教職員のつながりが不可欠だと主張するものまでさまざまだ。

 ChatGPTを教育に活用することを、生徒が授業中に電卓を使うことに例える人がいる。教室で電卓の使用を禁じられていた時代は終わり、スマートフォンの電卓アプリケーションを使う時代になった。今後は、ChatGPTなどの生成AIツールを学習の補助に使うことが一般的になる可能性がある。

6.金融

 AI技術は金融や銀行業務に影響を与える可能性がある。取引の監視や、効率的な貯蓄に関するアドバイスなどに、生成AIを活用することが可能だ。金融大手のMorgan Stanleyは、自社のデータベースの管理にAIチャットbotを使っている。

 世界経済フォーラム(World Economic Forum)が2020年1月に公開した報告書では、金融サービス企業の幹部職150人のうち77%が、「AI技術が戦略的に非常に重要になる」と回答した。既に金融、銀行、FinTech(金融とITの融合)の一部の企業は、先進的なAI技術に投資してきた。

7.グラフィックデザイン

 Adobeの画像編集アプリケーション「Photoshop」の新機能「Generative Fill」は、生成AIがグラフィックデザイナーを支援する一例だ。Generative Fillを使えば、画像編集の経験がない人でも、プロンプト(生成AIへの指示や質問)を入力することで画像編集ができる。テキストの情報を基に画像を生成するAIサービス「Dall-E」や、AI技術を使った画像生成サービス「Midjourney」のような生成AIツールも、プロンプトを入力するだけで精緻で芸術的なレンダリング(画像や映像の描画)によるリアルな画像を生成する。

8.技術職

 技術職におけるAI技術活用の一例が「ジェネレーティブデザイン」だ。ジェネレーティブデザインは、CAD(コンピュータ支援設計)を使った設計プロセスにAI技術を組み込み、デザインを生成する手法だ。ユーザーが定義したパラメーターの範囲内で、さまざまな設計案を自動で提示してくれる。機械設計の分野にジェネレーティブデザインが影響を与える可能性はあるが、人間に取って代わることはないと考えられる。

9.人事

 生成AIは人事領域のさまざまな場面に浸透する可能性がある。AI技術を搭載した採用管理システムを使って、以下のような業務を実施することが可能だ。

  • 採用基準に沿う候補者の発掘
  • 履歴書のレビュー
  • 採用担当者の業務自動化

 AIチャットbotは、従業員個人の活動をサポートすることにも活用可能だ。例えば、従業員が福利厚生に関する情報を見つけることを支援する。


 後編は、AI技術と人が共存するためのルール作りに関する活動を紹介する。

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