これから深刻になる「ストレージ」と「マルチクラウド」の問題とは?:マルチクラウド時代のストレージの使い方【前編】
企業が複数のインフラでストレージを稼働させることが当たり前となった今、これらのストレージを適切に管理するにはどうすればよいのか。Hitachi Vantaraの新製品と共にストレージ市場の動向を考えてみよう。
ストレージベンダーのHitachi Vantaraは2023年10月に、新しいストレージ管理ソフトウェアの「Hitachi Virtual Storage Platform One」を発表した。これは、ストレージ市場のトレンドを浮き彫りにした製品だと言える。
Hitachi Vantaraは、ユーザー企業のデータセンターやクラウドサービス、エッジなど、あらゆる場所に導入できるソフトウェア定義ストレージを提供することを方針に掲げる。さまざまなアプリケーションのインフラとして自社製品を利用可能にし、ユーザー企業のアプリケーションとデータのセキュリティ対策やデータ移行を簡略化することも目指している。その背景には何があるのか。
これからの当然と、ストレージに関する問題とは
米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)がハイブリッドクラウド(オンプレミスインフラとクラウドサービスを併用すること)やマルチクラウド(複数のクラウドサービスを併用すること)についてユーザー企業に尋ねた調査では、以下の傾向が明らかになった。
- 87%の企業が「自社のアプリケーションインフラは、今後2年間でより多くの拠点に分散する」と考えている。
- 81%の企業がデータセンターやクラウドサービス、エッジなど複数の拠点をまたぐアプリケーションで、データを行き来させることの困難さに直面している。
今や企業が複数のインフラにデータやアプリケーションを分散させることは当たり前になった。その結果、企業ではアプリケーションとデータの移植性を高める必要性が増している。アプリケーションやデータの移植性を高めるにはまず、ストレージの購入プロセスを見直す必要がある。
マルチクラウドを重視する「Virtual Storage Platform One」
Hitachi VantaraはVirtual Storage Platform Oneを提供することで、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドでのストレージ管理をより容易にしようとしている。Virtual Storage Platform Oneは以下のような機能を搭載しており、ユーザー企業はクラウドサービスの管理コンソールを通してこれらの機能を利用できる。
- レプリケーション(データの複製)の運用を簡略化する機能
- アプリケーションの状況に応じてストレージの容量を自動で調整する機能
- 複数のインフラにまたがるストレージを同期し、可用性と耐障害性を向上させる機能
企業がストレージを新しく購入するときの意思決定は、もはや部署や支社ごとに実施すべきではない。コンテナアーキテクチャの採用が進み、アプリケーションの移植性を高める需要が高まっていることで、現代のストレージにはデータとアプリケーションを自由に移動させるためのアジリティー(機敏性)が求められている。
マルチクラウドで自社製品を利用可能にすることは、ストレージベンダーが競争力を高めるための条件になっている。大量のデータを必要とする生成AI技術を巡るIT市場の盛り上がりを背景に、ストレージのアジリティーへの要求は高まり続けると考えられる。ユーザー企業は、複数のアプリケーションからさまざまな形式のデータを取り込んで活用できるようにすることを必要としている。
後編は、オンプレミスインフラとクラウドサービスの双方でストレージを運用するようになった企業が、ストレージを調達するときのポイントを説明する。
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