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オラクルが“生成AIの時代”に「SaaS」を推す理由とは?NEWS

これからの時代に企業が生き残るには、技術利用に関する戦略とそれを実現するシステム選定が欠かせない。日本オラクルの戦略発表を基に解説する。

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 日本オラクルは2023年10月末に開催した「Oracle Technology Day/Oracle Applications Day」で、国内企業が抱える課題と、その解決に向けた同社の方針を説明した。同社が2024年の注力分野とする取り組みは大きく2つ、「日本のためのクラウド提供」と「顧客のためのAI(人工知能)推進」だ。

 「日本企業は、レガシーシステムのモダナイゼーション(最新化)と、5年10年先の技術を見据えた次世代システムの検討に真剣に取り組むべきだ」――。日本オラクルの社長、三澤智光氏はそう強調した。まず三澤氏は、課題としてレガシーシステムのモダナイゼーションを取り上げた。

クラウドで「国内企業の課題」をどう解決?

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日本オラクルの三澤智光氏

 レガシーシステムには企業の重要なデータが格納されており、パッチ(修正プログラム)の適用やバージョンアップができない状態は非常に危険だ。これからシステム内のデータを活用していく上でも、モダナイゼーションは必須だという。

 特に三澤氏が注視するのが、ERP(統合基幹業務システム)にまつわる課題だ。従来のERP製品では、過度なアドオン開発(足りない機能を開発して追加すること)による導入コストと、5〜7年ごとに実施するアップグレードに掛かるコストが膨れ上がっていた。OracleのSaaS(Software as a Service)型アプリケーションスイート「Oracle Fusion Cloud Applications」と「Oracle NetSuite」では、半期もしくは四半期ごとの定期的なアップグレードを実施していく計画だ。定期的なアップグレードで最新機能を提供することにより、アドオンを抑制する他、ERPのユーザー企業にとって悩みの種だったアップグレードコストやセキュリティホール、パフォーマンスなどの問題解消につなげる。

 近年は、企業がクラウドサービスを選定する際の要件としてデータ主権(データの制御と管理に関する権利)の視点が欠かせなくなった。日本オラクルはユーザー企業のデータセンターでOracleのクラウドサービス群「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)を利用可能にするデータセンターサービス「OCI Dedicated Region」と「Oracle Alloy」を提供する。2つのサービスは基本的に同じ機能を持つが、Oracle Alloyではユーザー企業がOCIの運用や他サービスとの連携などができる点を特徴とする。

オラクルがLLM「Cohere」を提供する狙い

 三澤氏は今後提供を計画する生成AI(テキストや画像を自動生成するAI技術)機能についても説明した。基幹システムにおけるAI活用では、高可用性やスケーラビリティ(拡張性)、即時性、信頼性といった点が重視される。これらの要件を満たす企業向けAI機能と、それを稼働させるインフラやデータ管理機能、セキュリティ機能を提供し、2024年を「エンタープライズ生成AI元年にする」と同氏は語った。

 OracleはAIベンダーCohere社と連携して、企業向け大規模言語モデル(LLM)「Cohere」をOCIで利用可能にするサービス「OCI Generative AI」を提供する(提供時期は未定)。Cohereのパラメータ数(データ変数)は500億と、「GPT-3」の最大1750億と比べてコンパクトなモデルのため、必要なGPU(グラフィックス処理装置)数を抑えられる傾向にある。そのためユーザー企業が独自でモデルをトレーニングする「ファインチューニング」に掛かるコストや手間の削減、サステナビリティ(持続可能性)向上につなげられるメリットがある。

 企業がLLMに独自の回答を出力させる主な方法として、ファインチューニングの他に「RAG」(検索拡張生成)がある。RAGとは、学習データ以外の外部データベースから情報を検索、取得し、LLMが事前学習していない情報も回答できるよう補う手法を指す。三澤氏は「一般企業の間では、ファインチューニングと比較して必要な労力やコストの少ないRAGが主流となる」との見方を示す。RAGの実現にはベクトルデータ(数値型の構造体)が欠かせない。Cohere社はあらゆる形式のデータをベクトル形式に変換してコンピュータが処理できるようにする「エンベディング」向けLLMも提供しており、RAGの構築にも適する。

 生成AI活用を支えるインフラには、OracleとNVIDIAが提携して提供するGPUクラスタ「OCI Supercluster」が使われる。モデルの学習を実施する際の通信を高速化する技術として、Oracleはメモリ同士で直接データ転送をする技術「RDMA」(Remote Direct Memory Access)を採用する。

 Oracleは今後、同社のSaaS製品群全体に生成AI機能を組み込んでいくという。ユーザーはファインチューニングやRAGを実施する手間なく、最新のAI機能を利用できるようになる。このような利点を踏まえて三澤氏は、「5年10年先を見据えて、クラウドネイティブシステム(クラウドサービスでの運用を前提にしたシステム)を採用すべきだ」と強調する。

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